2023年の広島県経済は、新型コロナが収束し、製造業でも半導体供給が戻るなど回復基調となった。広島市ではサッカースタジアム開業やJR広島駅再開発など、都市開発が進んでいる。地元金融機関トップに、24年の県経済の見通しや経営方針を聞いた。

ー県経済の現状と新年の見通しは。景況感は緩やかに持ち直しているものの、コスト上昇や人手不足などが持続的回復に向けた懸念材料になっています。製造業はマツダが23年度中間期で過去最高益を計上するなど自動車関連を中心に回復しており、非製造業も総じて回復基調です。全体的に取引先の当面の資金繰り懸念は少ないと考えています。24年は緩やかな回復基調が続く見通しですが、米国の個人消費や設備投資の減少、中国の不動産市況の低迷など世界経済の先行きは減速の見通しで、景気を下押しする懸念があります。ー新年の金融情勢をどうみますか。「金利のある世界への回帰」に向け短期を含め金利は緩やかに上昇すると考えています。1月開始の新NISA対応で、昨年8月からアプリでNISA口座開設を始め、12月にはNISA活用オンラインセミナーを開催。取引先からの資産運用セミナー開催依頼が増え、10月から広島信金マネーアドバイザー向けのセミナー講師養成研修も始めました。ー24年度の注力分野は。中小企業の経営課題は資金繰り、売り上げ回復から人手不足、デジタル化などの対応に重点が移っています。24年度からの新中期計画では、①課題解決支援の裾野拡大と高付加価値化(営業店と専門部署一体のコンサル営業で新市場開拓・IT活用による生産性向上などをサポート)、②業務改革推進(既存業務の取捨選択、業務フロー見直し、デジタル環境整備などによる業務量削減)、③多様な人材が活躍する組織づくり(ITパスポート、FP、宅建など資格取得支援、リスキリング強化等)を柱に取り組んでいきます。23年度の実績は、事業承継は取引先へのヒアリングによる方針決定先約1300先に対し、自社株評価、相続税試算、外部専門家紹介などのサポートをしています。M&Aも21年度8組、22年度9組、23年度上期6組が成立するなど増加傾向です。人手不足解消に向け有料職業紹介事業の許可を取得し、専担者を配置。相談件数は22年度101社、23年度上期70社で、紹介は22年度24社、23年度上期は13社に。10月から人材不足対策としてIT活用・業務効率化支援メニューを追加し、勤怠や経理管理、スケジュール管理システム、配車システムなど外部専門家と連携した取り組みを始めました。販路拡大では、県内4信金合同マルシェに県内飲食製造が計16社、久世福商店を全国展開するサンクゼールとの商談会には7社が参加しました。事業再構築支援は、第10回公募までで累計204件が採択(採択率63.8%)され、広島信金単独でも83件(採択率86.5%)で、全国平均45.6%を上回っています。「ひろしんSDGs・カーボンニュートラルサポート」の23年9月末の相談件数は累計約800件で、SDGs私募債は9月末で累計21件になりました。ウェブ活用では、スマートフォンで口座の入出金明細確認などができる「ひろしんアプリ」の利用者が5万人を超えました。家族間の家計管理などに利用できる「口座明細共有サービス」を始めるなど機能を強化。マイカーローンなど来店不要のウェブ完結型(住宅ローン除く)の実行額が個人向け全体の67%を占めています。ゼロゼロ融資は利用先のうち4割が今後据置期間満了を迎え、対象先に元金返済を始める前に面談を行い、必要に応じて伴走支援型を活用するよう取り組んでいます。資金繰り悪化の要因では、厚生年金など社会保険の支払い滞納などもみられます。

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