学生が地元経営者をインタビューすることで、地域で輝く企業に目を向け、思考を深め、広島での就職意識を高めてもらうプロジェクト。県内の大学生が2024年の夏、東広島市の企業を訪問し、インタビューしました。
国籍・性別問わず働きやすく ダイバーシティ経営を実践
株式会社メンテックワールド / 船本 聰武 専務取締役
ー事業内容を教えてください。1961年に東洋工業(現マツダ)本社工場の生産設備メンテナンス業務で創業。2008年に本社を東広島市に移転しました。工場のメンテナンス関連の業務をはじめ、ダクト製造などが主な事業です。ダクトはショッピングモールなどの大きな建物や集合住宅の天井裏などにある、空調・換気をするための筒状の軽くて長い鋼管をイメージしてもらえたらと思います。そのほか、今後必要とされる企業の自動化・省力化に向けて、21年から次世代ロボットなどの販売にも取り組んでいます。ー会社が長く続く秘訣は。変えないものと変えていくもの、両方を大切にして時代に合わせて対応してくことです。「百試千改」、「不易流行」という言葉がありますね。当社の主力である自動車生産設備のメンテナンス関連事業を継続しながら、時代に合わせて、ロボット販売や国籍・性別・年齢・学歴にとらわれないダイバーシティ経営に取り組んでいます。一本の筋を貫きつつ、周りの環境に合わせて柔軟に変わっていかなければならないのです。当社は企業向けに事業を展開しています。そこで大切なのは優れた製品やサービスを生み出すことと、取引先との信頼関係が土台にあること。日々の取引で、信用と信頼をこつこつ積み上げるよう心掛けています。

ー経営の危機はありましたか。最も危機に瀕したのは2008年のリーマンショックです。仕事は半分になりました。加えてその年に本社を東広島市に移転。多くの企業のリストラによる失業者が大量に出る中、当社はそうしたことは避け、ワークシェアリングで対応しました。同時にダイバーシティ経営、社長のトップ営業による新規取引先の開拓を推進。なんとか苦境を乗り越えた結果、今では従業員数も増えました。あの時に一生懸命取り組んだおかげで、今があります。ー会社経営で大切にしていることは。社員のため、家族のため、お客さまのため、地域のために当社自体の財務基盤を整えることです。財務基盤がきちんとしていないと、いくら良い製品やサービスを生み出したとしても、長続きしません。そうなると、社員やその家族を守ることはできません。

ーダイバーシティ経営について教えてください。ダイバーシティ経営を実践しており、女性活躍もメインテーマの一つ。具体的には女性の積極採用、管理職の登用に取り組んでいます。また、子育てを支援するため、19年に企業主導型保育園「インターナショナルキッズコミュニティ(通称:IKC・イック)」を開設。特にお子さまの送り迎えをされる保護者の多くは母親であることから、イックではおむつや布団の持参が不要な〝手ぶら保育〟などで負担軽減に力を入れています。保育園は当社の従業員のほかに、連携している市内25社に勤めている方、地元地域のお子さまも利用していただけます。当社では多国籍の従業員が働くため、国際性豊かに育ってほしい思いから、園では日本語・英語・スペイン語・中国語を遊びながら4カ国語を学べるのが特徴です。このほか国際化に対応した教育にも取り組んでいます。ー人手不足への対応は。日本の製造業は、労働力と市場を確保するために海外展開を進めてきました。しかし、現在は円安で見直しを迫られています。ロボットによる自動化が進む中でも、最終的には人の手が必要です。日本は人口減少が進み、どの企業も人手不足が課題。当社も労働集約型の業務では外国人労働者の力を借りざるを得ない状況です。そのような背景もあり、ダイバーシティ経営や企業内保育園での多言語対応に取り組んでいます。ー多国籍の人材、働きやすい工夫は。現在、ベトナム・バングラデシュ・インドネシア・中国・ガーナ国籍の社員が在籍しています。言葉の壁をできるだけ取り除き、コミュニケーションを円滑にするためにも、外国人〝人財〟の採用は一定の日本語力があることを条件に設定。社内にはベトナム語や英語で表記した案内表示を設置したり、バングラデシュ出身者向けにお祈りができる部屋も用意したりと、それぞれの国の文化を尊重しています。ー学生時代にやっておくべきことは。一生懸命に打ち込めるものを一つ、つくってください。趣味やアルバイト、なんでも結構です。その経験を面接で自信を持って話せるといいですね。
《私たちがインタビューしました》
◆広島大学3年 前田 海結アイデアの生み出し方や学生生活のアドバイスなどもインタビューできた貴重な機会でした。長期的な信頼が大切だと聞き、普段の生活でも心掛けたいです。◆広島大学1年 森岡 和敏インタビュー中にもお客さまからの問い合わせに即対応する姿を見て、信頼関係の大切さを実感しました。「経営は生き物だから(即対応する)」という言葉に感銘を受け、学校では学べない貴重な経験でした。◆安田女子大学2年 東浜 優衣今まで年齢や性別にとらわれていましたが、ダイバーシティ経営の話を聞き、その考えを改める良い機会になりました。相手を尊重できる大人になりたいです。◆安田女子大学1年 中村 杏経営者の考え方は、そのまま社員の生活に関わることを知りました。社員のことを家族のように大切にされる姿に経営者が背負う責任の重さを感じます。
プロフィル

株式会社メンテックワールド / 船本 聰武 専務取締役
『変えないものと変えていくもの、両方を大切に』
【会社概要】
1961年に創業し、自動車生産設備メンテナンスやダクト製造のほか、次世代ロボット販売などを手掛ける。ダイバーシティ経営を実践し、女性や多国籍の人たちが働きやすいよう、企業主導型保育園を開設。