野球談義が楽しい季節。カープの勝敗に一喜一憂し、大リーグ大谷選手の活躍にも心が躍る。ドジャースの本拠地は連日満員。チケットが高騰し、スタジアムには大創産業など日本企業の広告が並ぶ。そんな米国に比べて日本のスポーツ産業は民間投資やマーケットが成熟しておらず、伸び代は大きいという。広島県庁に事務局を置くスポーツアクティベーションひろしま(SAH)の代表に2月1日付で着任した秦アンディ英之さん(52)は、「有望な子どもが一流の選手になるまでに、たくさんのお金がかかる。練習環境の整備を含め、スポーツ振興には企業からの投資が欠かせない。メジャーなスポーツだけでなく、さまざまな競技に目を向けてもらいたい。特に中小企業ではスポーツ投資のリターンを明確化できていないためか、欧米の市場規模と大きな差が生まれている」秦さんはJリーグ特任理事やプロバスケチームGMなどを務めた後、スポーツデータ調査分析会社を経営。ソニー勤務時代にブランドマネジメント部でグローバル戦略構築を担当した経験も踏まえ、ズバリと指摘する。「スポーツ投資のリターンはブランド、売り上げ、社会貢献、ホスピタリティー、インナーマーケティング(社員の愛着強化や理念浸透)の五つに分類できる。売り上げ目的なら商品の購入者に選手グッズの抽選権を与えて拡販したり、ホスピタリティーやインナーマーケティングならチケットを贈ったり交流の場にするなど、狙いに沿った戦術を考えるべき」SAHは2020年4月に県スポーツ推進課が結成。国際・全国大会の誘致促進などを通じ、交流人口や観光消費額の増加を目指している。わがまちスポーツと銘打ち12市町のにぎわい創出の取り組みに3カ年で毎年2分の1・最大500万円を補助。21年に三次市で初開催された女子硬式野球西日本大会は毎年約30チーム・選手600人が集まる。女子野球チームとスポーツコミッションの結成などと併せて評価され、WBSC女子野球ワールドカップ(グループステージB)を10万人以下の自治体で初めて誘致した。このほか三原市の佐木島で離島初となるジャパンサイクルリーグ公認のロードレースを、空港近くの中央森林公園と同島ではファンライドみはらを開催。「尾道海属」のコンセプトを掲げ、マリンスポーツをサイクリングに次ぐ観光資源に育てる試みなども後押し。25年度はラグビー中国電力レッドレグリオンズの本拠地がある坂町の小学校で、機運醸成のためのタグラグビー体験などを支援する。県内25チームの競技の枠を超えた応援プロジェクト「チームウィッシュ」にも力を注ぐ。複数チームに関わる活躍予想ゲームなどを通じ、さまざまな競技への興味を喚起する。専用サイトで選手インタビュー記事などを掲載。「競技の枠を超え大きな力を生み、スポーツ資源を最大限に活用していく。広島をもっと笑顔あふれる街にしたい」今年は広島県などの誘致活動によって、アーバンスポーツの複合型イベント「アーバンフューチャーズ」(日本アーバンスポーツ支援協議会主催)が4月18〜20日にひろしまゲートパークで開かれる。来場見込みは5万人。さまざまなスポーツ競技の魅力が広まり、街に元気があふれる効果は大きい。

担当記者:吉田

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