旧駅ビルアッセの閉館から5年ぶり。ようやく晴れやかな春を迎えた。3月24日、国内外から広島を訪れる人を迎える玄関口として広島新駅ビルがオープン。地下1階から地上21階建て延べ11万平方㍍にホテルやシネコンが入り、地下1階から9階を占める商業施設「ミナモア」は中四国初も含めショッピングや食を楽しめる約220店が並ぶ。駅北口に向けて開く駅橋上・高架下施設エキエと自由通路でつながり、ビル2階へ直接乗り入れる路面電車は全国でも珍しく、市街地と郊外を結ぶ。広島らしさを打ち出す全館コンセプトは誰もが自分の居場所でくつろげる〝カフェ〟仕様。観光やビジネスで訪れる人は無論、地域の人もそれぞれの目的に応じ、憩い、楽しめる空間づくりに知恵を絞った。運営する中国SC開発(南区)は、一般と県内の大学・高専校合わせ13校対象に計20回に及ぶワークショップを開くなど、多くの人の意見や思いに耳を傾け、全精力を尽くした。4・6階の中央部にある共用空間の活用アイデアはコンペを実施。コンセプトやデザイン、公益性、実現可能性の審査を経て広島工業大学と呉工業高等専門学校の学生が、それぞれグランプリに輝いた。今後、受賞アイデアを具現化するまで応募作品の中から10提案をポスターにして張り出す。川と瀬戸内海のミナモ(水面)とミナ(みんな)の意味を込めるミナモアならではの居心地のよさを体感してもらう象徴的なエリアとして若い人の発想がどんな姿かたちとなり、みんなを迎えてくれるだろうか。広工大環境学部建築デザイン学科3年の立花一貴さんと小田成菜さんは意見を戦わせながら納得のいくまでアイデアを練った。立花さんは、「電車が乗り入れるターミナル空間との調和も考えながら休憩場所やポップアップショップの出店に活用してもらいたいと考えた。水面の揺らぎを感じられるカーテンでスペースを仕切り、可変性を持たせることでバリエーションのある使い方や、興味を引く動線にも工夫。人が自然と足を運んでくれる場にしたい」呉高専は4・5年生4人チームで、各店舗メニューを一覧できる交流スペースをプラン。窓からの陽光を水面からの反射光のように採り込み、和紙で作ったコイのモビールが泳ぎ回るような空間で広島らしさを演出。建築学分野の大和義昭教授は、「和紙は大竹のものを使う予定。新駅ビルでのプランの実施は大きなチャレンジ。一丸になって取り組みたい」建築業界を志望する学生は引く手あまた。特に関東・関西からの引き合いが強いという。県の転出超過に歯止めがかからないが、広島のまちづくりへ参加する若者の意気込みが心強い。街がみずみずしい魅力を発揮し、いつか転入超過に転じる日を願いたい。市は広島駅周辺と紙屋町・八丁堀地区の楕円形の都心づくりを目指す。中国SC開発の竹中靖社長は、「駅拠点の集客を紙屋町・八丁堀へ促し、広島全域に好循環させる仕掛けが大切。オープンはゴールではなく、いかにコンセプトを具現化できるかが勝負。誰もが集い、新たな出会いが生まれるミナモアを未来へつなげたい」3000人規模の採用枠に1万人超が殺到したミナモアに新しい職場が誕生。再生した玄関口から街の元気を振りまいてもらいたい。

担当記者:藤井

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