(社)サーキュラーエコノミーラボ広島 / 河村 伸枝 代表理事(シンギ広報室CSR推進マネージャー)・定金 基 理事(叡啓大学教授・コパイロツト代表取締役)
設立に至った経緯は。
河村 同学の共創プロジェクトに当社が2期連続で参加したことがきっかけだ。社内のリソースだけでは解決に至っていない問題にアカデミアの知見を入れたいと考えた。
定金 同プロジェクトでは、大学の教員、学生と企業が約半年間で企業課題の構造化から解決策の実証までを行う。緊急度は低いが重要な課題に外部の視点を入れて解決する狙いだ。
河村 紙コップのリサイクルは過去に自社で取り組んだが、特定の容器だけをスタッフに集めてもらう手間と時間がコストとなったほか、一般客の意識付けも難しく一過性になっていた。プロジェクトを通じ、仕組みとして定着させる母体が必要と考えて法人化した。
定金 今回の資源回収スキーム構築は環境負荷低減への新たな価値創造であり、ソーシャルシステムデザインという本学の教育方針とも合致。毎週会議を重ねながら事業モデルを磨いてきた。
なぜ大学発ベンチャーという形を選んだのか。
定金 多様なステークホルダーに参画を求める際、1社が主導すると営利の枠組みに縛られがち。大学が中立的なハブとなれば、広く社会に開かれたプラットフォームとなる。本学は専門知識の教育だけでなく、多様なファクターをつなぐ人材を育てる特徴がある。今回の事業と大学の役割は本質的に一致している。
河村 当初は株式会社化や広告収入による運営も検討したが、想いや姿勢に共感し、協賛してもらう仕組みの方が長続きすると判断して一般社団法人を選んだ。将来はNPOへの移行も視野に入れる。
事業の仕組みは。
河村 紙コップを利用しているショッピングモールやイベント事業者に容器を提供し、従来かかっていた購入費を回収に充ててもらう「ペーパーカップサーキュレーションパートナーシップ」という協賛システムを立ち上げた。容器に出資企業名を印刷して費用を賄う。そのほか、参画企業に学生が訪問して取り組みなどを取材・記事化し、PR素材として提供する。カーボンクレジットへの展開も検討したい。
定金 本学の事業でも参加企業が採用面での認知獲得を実感している事例が増えている。
なぜ紙コップに絞ったのか。
河村 プラスチックは種類が多く、素材ごとの回収が難しい。紙はゴミとして捨てられているが、実は再資源化できる「もっぱら物」という廃棄物処理法上の独特の立ち位置として一元的に集められる。まずは使い捨て容器が回収可能な資源だという意識の訴求を事業の核心に置いた。
定金 学生からプラ回収について問いかけもあった。打ち合わせの度に紆余(うよ)曲折したが、その過程で学生の理解が深まり、法律や消費者の分別行動まで議論した末に原案に落ち着いた。
実証実験の手応えは。
河村 昨年11月に坂町で開かれた広島ベイマラソンの1日で参加者約2000人が使った紙容器48㌔を回収。学生に協力してもらい、給水所でほぼ全量を集められた。専門業者へ搬入し、焼却処理と比べて約39・8㌔のCO2を削減したという証明を受けた。同大会の実行委員会からも喜ばれ、次もやりましょうと声をかけていただいた。
定金 回収から再資源化まで一連の流れを実証できたことに大きな意味がある。3月末からはジアウトレット広島で3カ月間、約10万個の紙コップを使った本格実証を行う。学生がフィールドワークとして先方にアタックし、実現した案件だ。
課題と今後の展望は。
河村 最大の課題は特定の廃棄物だけをきれいな状態で回収する方法の確立だ。「捨てる」ではなく「集める」という意識を一般の人にどう醸成するか、回収ボックスのデザインや言葉の選び方までチーム全員で知恵を絞っている。今後は行政とのつながりも広げていく。
定金 大学の特性上、学生の入れ替わりがある。後継者を育て、他大学も巻き込みながらこの仕組みを県全体の資源循環プラットフォームとして定着させたい。ビジネスとして成立しにくい領域に、大学という非営利的な立場で関与することが本学らしい産学連携の形だと思っている。
PROFILE
かわむら のぶえ(写真右)
1985年生まれ、広島市出身。安田女子大学文学部を卒業後、旅行会社を経て18年にシンギ入社。25年6月から現職。
さだかね もとい(写真左)
1975年生まれ、岡山県出身。2005年、DX・新規事業推進支援のコパイロツトを創業。代表取締役を務める。23年から現職兼務。