4℃ホールディングス/増田 英紀 社長
消費動向をどう見ているか。
人口減と少子高齢化が加速し、従前の3事業のままでは将来が厳しくなる。今は物価高に加え、消費の二極化が際立つ。長期、短期の経営環境を見極め、手を打つ必要がある。中でも共働きで世帯年収が1400万円を超えるパワーカップルの消費行動には注目している。
羅針を買収した判断、経緯は。
買収前の既存店舗は東京・銀座に2、大阪・心斎橋と合わせ3店舗体制。比較的若い層では、高級時計に資産価値を求める傾向がうかがえる。一方の4℃は、百貨店向けを主力に男性が女性に贈るギフトブランドの地位を獲得してきたが、好立地への出店が一巡し、ファッションビル向けブランド「Canal4℃」など多店舗展開したものの減収が続いた。認知度が必ずしも好感度につながらないと分析。ブライダル関連市場も縮小し、女性の自家需要を掘り起こすMD改革に踏み切った。既に男女の購買比も逆転しており、27年度から成長軌道に乗る見通しだ。
羅針の買収はリユース事業の将来性などを鑑みて決断したが、4℃を再び成長軌道に乗せるための、いわゆるリードタイムを確保する側面もある。未来志向の成長投資として、債券と株式で200億円の軍資金をどう有効活用するのか検討していた矢先に話を頂き、108億円を投じた。潤沢な資金力で在庫をはじめとした経営資源を厚くしたいという羅針創業者の考えと一致。人格に優れた創業者への信頼も大きい。
4事業会社の体制になり、成長軌道をどのように描いていますか。
第7次中計(25年〜27年)は連結売上高700億円、営業利益35億円M&Aでブランド事業底上げ環境変化にらみ成長基盤構築へト ッ プ イ ン タ ビ ュ ー4℃ホールディングス増田 英紀 社長の3期連続増収、のれん償却前ROEは8%以上を計画。FDCプロダクツはファッションビル向けのカナル4℃のリブランディングを実施。ファッション性を重視し耳周りアイテム(ピアスやイヤーカフなど)といった低価格帯を拡大する。羅針は〝最高品質のプレミアムリユース時計専門店〟としてブランド化を推進。アスティは引き続き素材提案を強化して専門店マーケットを拡大、アージュは関東・関西中心に年10店舗を継続出店する計画だ。
4事業会社はそれぞれ独自事業を展開しており、既存3社で健全な事業ポートフォリオを構築してきたが、羅針で四つ目の柱ができた。ビジネスモデルの異なる4事業を展開することで、環境変化に対応できる、さらに強固なポートフォリオの構築につながった。2030年ビジョンの達成へ、各事業が専門領域で独自性を発揮していくことが重要だ。持続的な成長を支えるためにヒト・モノ・カネといった経営資源を最適に配分していくのが持ち株会社の役割だと考えている。
成長エンジンの決め手は何か。
事業を存続、発展させるために専門性の高い人材の育成が必須だ。引き続き、変化に対応し挑戦する企業風土を次世代に根付かせる一方、市場の異なる4事業それぞれの業界に精通したプロフェッショナル人材の層を厚くしていきたい。
変化を、どう読み、洞察し、判断するか。同じブランド事業でも、4℃は好みといった情緒的な価値に左右されやすく、羅針は資産価値と、求められる提供価値は全く異なる。何より顧客起点が重要だ。
マーケットは縮小するが、事業領域を広げる、ライフタイムバリューを高めるといった両面作戦を推し進めていく。富裕層は首都圏が圧倒的に多い。人口減が進む中で、需要が期待できる商圏で勝負していく。