その他 2026.02.24

第47回 広経大教授が語る デジタルマーケティングの現在と未来

最初の一歩

 デジタルマーケティング(デジマ)という言葉を耳にすると、リスティング広告、SNS広告や分析ツールといった施策を思い浮かべるかもしれません。でも実際には、これらの施策を実行する前に解決すべき課題があります。社内のプロセスや資料がアナログのままだという現実です。
 これはデジマ以前の段階です。顧客リストはエクセルで、営業報告は紙のファイルで保存しているということはありませんか。顧客情報はデータ化されていますか。過去のキャンペーン結果のデータは顧客とひも付いて見られますか。データは蓄積されないと改善のサイクルは回りません。
 デジマにはデータという基盤が必要です。ですから、最初に着手すべきは社内のデジタル化です。
 例えば、営業の週報をクラウド上のフォームに変えるだけでリアルタイムに状況を把握できるようになり、集計作業を削減できます。あるいは、問い合わせ内容をエクセルに転記する作業をCRMツールに直接入力すれば誤変換や入力ミスが減り、過去のやり取りもすぐに検索できます。
 デジタル化で押さえたい三つのポイントがあります。
① 紙の資料をデータに変える
 見積書、請求書、契約書など紙で管理しているデータを洗い出し、順にデジタル化します。ただしスキャンしてPDFにするだけでは不十分で、検索・集計できる形にしておくことがポイントです。
② 同じ情報は一度だけ入力する
 顧客情報を営業がエクセルで管理し、経理は会計ソフトに別途入力して、現場はまた別のリストを使うという多重管理はミスを生みます。これを一元管理するだけで残業も現場のストレスもかなり減るでしょう。
③ 定型作業を自動化する
 メールの定型返信、請求書の転記、管理指標の簡単な集計作業などは、なるべくシステムやツールに任せていきます。できるだけ工数を減らし、かつデータをデジタル化して蓄積します。
 これらはどれも難しい技術や大きな投資も必要ありません。しかし確実に現場のストレスは減るでしょう。そしてデジタル化は「見える化」です。その結果、勘と経験に頼ってきた経営を数字で裏付けできる状態に近づけてくれます。ここからデジマが始まります。
 どの顧客が、どの商品で、どれくらい利益を生んでいるのか。どの工程で、どれくらい時間とコストがかかっているのか。どの提案が、どんな確率で受注につながっているのか、などの疑問が感覚ではなく、ひと目で把握できるようになると施策検討の質が変わるでしょう。

守りから攻めへ

 デジタル化だけでは単なるコスト削減の話で終わってしまいます。蓄積されたデータを使って広告、キャンペーン、新サービス、新市場攻略などを設計することを始めます。例えば売上推移を見ながらキャンペーンを企画したり、デジタルで保存された営業活動を分析して、どんな提案がどのタイプの顧客に刺さっているかを発見できるようになります。
 こうして守りのデジタル化と攻めのデジマをリンクさせておくと施策の精度が徐々に向上して効率化が進むでしょう。

まず、最初の一歩

 先に述べたように自社の業務プロセスを分解し、紙と人手に頼っている領域を発見します。その中からすぐに変えられそうなところを一つだけ選んでみましょう。そこに小さな投資をしてデジタル化を進めます。そして、他のプロセスにも少しずつ広げていくことで攻めのデジマの準備が整うでしょう。後から振り返ると、その一歩がデジマへの重要な分岐点になったことが分かる日が来ると思います。

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PROFILE
宮田 庄悟(みやた しょうご)

宮田 庄悟(みやた しょうご) 1956年1月3日生まれ、和歌山県出身。早稲田大学を卒業し、79年4月に電通入社。東京、ニューヨーク、北京、ロンドンでマーケティング、イベント、スポーツ業務に従事。「ラグビーワールドカップ2019組織委員会」の広報・マーケティングなどを担当。20年4月から現職。

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