広島商工会議所 / 松藤 研介 会頭
広島県経済の現状と新年の見通しは。
広島の経済情勢については、米国関税の影響が円安によって幾分か相殺されていることに加え、AIをはじめとした「デジタル化・省力化」に対する設備投資も堅調さを維持しており、底堅い個人消費にも支えられ、総合的には緩やかな回復基調で推移している。
しかしながら、世界経済を俯瞰(ふかん)すると、保護主義的な政策により、貿易摩擦や地政学的リスクが高まっており、今後の経済への影響が懸念される。加えて、中小企業・小規模事業者においては、人手不足や労務費の上昇、原材料価格の高騰など、多くの経営課題に直面していると認識している。
こうした中、今年は構造的な賃金・物価の好循環の定着に向けて「正念場」にあるだろう。賃上げについては「春闘」が大きなポイントと言える。昨年は大企業を中心に高水準な賃上げが実現したが、中小企業にとっては、最低賃金の1020円から1085円という大幅な引き上げによる負担も大きく、物価高に負けない継続的な賃上げの実現が課題となっている。
ひろぎんホールディングスが2025年10月に行った調査によると、県内企業約300社のうち7割超が、26年度も「25年度と同等以上の賃上げを行う」と回答しているが、防衛的な賃上げを強いることがないよう、環境整備が急務であると考えている。
本所では引き続き「パートナーシップ構築宣言」の普及拡大に取り組み、「良いモノやサービスには値が付く」という価値観の確立に向け、関係機関と連携しながら一層の周知啓発に取り組んでいく。
26年の注力事業は。
大きく三つあり、一つ目は中小企業・小規模事業者への経営支援だ。第六次中期行動計画に基づき、広島経済の好循環の実現に向け、中小企業・小規模事業者の自己変革への挑戦を支援。中小企業・小規模事業者が「稼ぐ力」を強化し、収益力や経営力の向上を図るための取り組みを引き続き後押しする。
厳しい経営環境が続く中、中小企業・小規模事業者を中心にコロナ禍以降、いまだ売り上げ回復の足取りが鈍い事業者や、特別貸付などで増大した借入金の返済負担により資金繰りが厳しくなっている事業者が多い。本所には、資金調達や販路拡大による収益向上に向けた相談が数多く寄せられている。このため、資金調達や各種補助金申請、創業、事業承継、DX化推進など、事業者が抱える多様な経営課題に対し、本所経営指導員などが、中小企業活性化協議会や事業承継・引継ぎ支援センター、日本政策金融公庫などの関係機関や各分野の専門家を活用しつつ、事業者に寄り添ったきめ細かな伴走型支援に注力する。
また経済の好循環を中小企業へと波及させていくためには、賃上げの原資となる労務費を含めた「取引価格の適正化」が不可欠。このため、引き続きパートナーシップ構築宣言の実効性を高め、適正な価格転嫁に向けた環境整備にも努める。さらに、政府に対しては、セーフティネット支援策の拡充などを強力に働きかけていく。
2点目として、当地域が持続的な発展を遂げていくためには「定住人口」の減少に歯止めをかけることに加え、「関係人口」「交流人口」の増加が必要となる。そこで私が考えた合言葉が「Stay@広島(ステイひろしま)」だ。訪れる人も暮らす人も、より「広島で過ごしたくなる」ように、そして「広島にとどまる」ことで生まれる笑顔の連鎖を広げたいという願いを込めた。この合言葉と共に本所の事業を通じて、働きたくなる広島の企業の魅力に加え、地域資源など地場ポテンシャルの高さを発信する。また県、市や関係機関との連携も進めたい。
3点目は「基町相生通地区市街地再開発事業」で、高層棟「カミハチクロス」の建設工事は計画通り進んでおり、現在は26階から31階の躯体工事が行われている。このまま順調に進めば、今年3月には高さ160㍍の最上部に到達する。
本所の移転については、27年の高層棟竣工後、速やかに移転し業務を開始できるよう準備を進めており、併せて産業支援と観光交流機能の集積を目指し、関係者との協議を重ねている。今後も関係者と緊密に連携し、着実に推進していく。
転出超過対策について。
前述した新年互礼会のあいさつ通り、この問題もまさにこうした「気持ち」を発信することが重要だと思う。私自身、長年にわたり更生保護といった社会福祉に携わってきた経験から、何よりも大切なのは広島に住む人々が「この街が好きだ」と思え、他都市の人々からも「広島は素敵な街だね」と言ってもらえるような笑顔にあふれた明るい街であることだと考えている。
そのためには、次代を担う若者に選ばれ、住み続けてもらえるような「明るく、安心・安全で魅力的なまちづくり」への取り組みが、定住人口の増加には不可欠だろう。ここでも合言葉はやはりStay@広島だ。人口流出が課題とされる中、観光のみならず、日々の暮らしそのものが魅力となるまちづくりが必要。歴史や文化、自然が織りなす広島の魅力を改めて見つめ直し、訪れる人が滞在したくなる温かさと、住む人が誇りを持てる心地よさを育てることこそが、地域経済の活性化・発展につながる原点であり、広島はさらに輝けると確信している。
私たちが発信し、育て、広げていく。そうした前向きなエネルギーをStay@広島に託し、人と街が寄り添い合う未来への一歩を踏み出していきたい。各種事業を通じて、広島の企業や街づくり、地域資源を活用した観光など、さまざまな広島の魅力を伝え、広島が活気と高揚感に満ちた都市となるよう、その未来づくりに貢献していく。
広島県の課題である通過型観光の対策について。
本所が事務局を務める「広島湾ベイエリア・海生都市圏研究協議会」では、広島を訪れる修学旅行生に、島や山の8地域で民泊してもらい、地域住民との交流を図る「体験型修学旅行」を07年度から展開している。25年度は1〜3月の見込みを含め、66校から7336人(うちインバウンド6校136 人)を予定しており、延べ10万人を超える修学旅行生の誘致につながっている。
また、本所の常任委員会の一つである「都市機能強化委員会」では、神楽や歴史、食、温泉など豊富な観光資源を有する島根県石見地域に着目し、広島市とともに現地視察や行政との意見交換を行うなど、滞在型の広域観光ルート形成に向けた取り組みを進めている。このように、官民が一体となって広域連携を図ることで、関係人口・交流人口の拡大を図っていく。