カープの独り言 2025.11.25

崖っぷちの物語

迫 勝則のカープの独り言/ No.940

 プロ野球の世界では〝崖っぷち〟から起死回生で立ち上がってきた選手たちの物語は数多い。カープでは2003年オフにトレード要員になったものの、手を挙げる球団がなくカープに留まり、その翌年(04年)に首位打者を獲得した〝赤ゴジラ〟嶋重宣の物語が有名である。
 背番号96。今季8年目にしてようやく目覚めた中村奨成の物語も、嶋の話によく似ている。中村は24年オフの契約時に鈴木清明球団本部長から「お前のポテンシャルにもう1年懸ける」という言葉を掛けられた。しかし3月のオープン戦で結果が出ず、開幕から2軍調整に。中村は内心で焦った。正直に言って「もう終わったな」と思ったという。
 このとき彼に声を掛けるタイミングをジッと待っていたのは、当時の福地寿樹2軍ヘッド兼打撃・走塁コーチだった。福地は言う。「僕は選手ごとに異なる〝トリセツ〟(取扱説明書)を持っているんです。頑固で人の言うことを聞かなかった奨成を変えるチャンスは、今しかないと思いました」。そこから二人三脚で打撃フォーム改造に取り組む。「変えると、もう元に戻れないぞ」。「はい、打てるなら何でもやります」。
 4月2日、中村が1軍に呼ばれた。そして11日の巨人戦、今季初打席で初ヒットを放つ。さらに20日の阪神戦で今季初スタメン。彼は改造したフォームで2安打を放った。以降、出場した104試合で344打数97安打、打率2割8分2厘、9本塁打、33打点。全ての数字がキャリアハイだった。中村は〝崖っぷち〟から目の覚めるような活躍により、カープの主力打者の一人になった。

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PROFILE
迫 勝則(さこ かつのり)

迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「カープ不朽のエース物語」。

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