日本銀行 / 片桐 大地 広島支店長
広島県経済の現状と見通しは。

9月5日の広島県金融経済月報では、「緩やかな回復基調」を据え置きました。個人消費も「緩やかな回復基調」を維持。物価高で食品などの節約志向があり来店客数減少などがある一方、お盆のすし、オードブル、百貨店の宝飾品が好調など、「メリハリ消費」の傾向がみられます。インバウンドを中心に主要観光地への入込客も緩やかに増加しています。
設備投資は増え、住宅投資は弱めの動き、公共投資は横ばい圏内、輸出は弱めの動きです。生産は自動車が弱めの動きの一方、電気機械が増加、造船が持ち直し、鉄鋼が横ばい圏内となっており、雇用・所得環境は緩やかに改善しています。
トランプ関税の影響をよく聞かれますが、自動車等の関税率15%が決まり文書化され、輸出産業などに影響が出ることは予想されるものの、広島の企業経営者からは「対策が取りやすくなった」、「影響が限定的になる可能性」という声も聞かれます。
広島経済活性化のアイデアは。
製造業の集積、世界遺産などの観光資源や広島サミット開催、被団協のノーベル賞受賞を追い風としたインバウンドの増加に加え、サッカースタジアムや広島駅ビルといった街中の再開発事業などの強みをうまく連動させてほしいですね。個別組織の取り組みではなく、コンテンツをつなげて相乗効果を図ることが重要。着任後、宮島や尾道、御手洗、安芸高田市の郡山城などに行きましたが、平和公園・原爆ドームに来てもらった後に、例えば毛利元就・輝元や北前船の歴史に触れてもらうよう観光テーマを広げてパッケージ化すると、宿泊や観光消費額の増加につながるのではないかと思います。
もうひとつは構造的に人口減少や人口流出が課題となる中で、労働力確保の重要性が増しています。世界人口は増えておりマーケットは海外に求めることはできますが、エリア内での働き手の不足はより深刻な問題。副業制度や外国人材活用のほか、省人化・省力化投資も増えています。企業にとっては基本的なことですが、付加価値を高め生産性を向上させ、賃上げや設備投資ができるよう収益力を高めることが大切。人員を引き継ぐ形での事業承継やM&Aも一層重要になるでしょう。
これまでで印象深い仕事は。
発券局総務課長時代に、新紙幣発行の準備に携わり、偽造防止や製造の安定性などに取り組みました。秋田支店長時代は2年3カ月間で、民間企業だけで約190社の経営者と面会。秋田県は風力や地熱発電が全国トップクラスです。蓄電など再生エネルギー関連産業も盛んで、秋田支店で24年に特別調査「秋田県で進む再エネ発電の体系的理解〜県経済における需要創出に貢献〜」をまとめました。県内の食品自給率が約200%の農業県で、米をはじめとする大規模農業法人も訪問。竿燈まつり、大曲花火などの祭りにも行きました。
PROFILE
片桐 大地(かたぎり だいち) 1973年4月26日生まれ、長野県安曇野市出身。97年に一橋大学法学部を卒業し、日本銀行入行。名古屋支店企画役、業務局企画役、預金保険機構出向、秋田支店長などを経て、2025年6月から現職。趣味は登山、スキー、釣り。秋田時代は鳥海山などに登り、10月に大山登山を計画。釣りは秋田時代は男鹿半島で真鯛やカサゴを釣り、自分で調理した。