広島大学発ベンチャーのスペース・バイオ・ラボラトリーズ(中区橋本町、河原裕美社長)はNASAケネディ宇宙センターの微小重力シミュレーション支援施設(MSSF)向けに大型の重力制御装置を特注で製作し、9月5日に納品した。国際宇宙ステーションと同じ1000分の1G(1G=地球重力)の環境を再現できる。NASAは「アルテミス計画」で2027年ごろの月面有人着陸・探査や将来の火星有人探査を目指しており、同装置はそれらを想定した実験に使われる。
NASAでは宇宙飛行士の筋力や骨が弱くなるなど無重力が細胞に与える影響をはじめ、火星移住に必要な食料自給を視野に入れた研究などが進む。例えば植物が重力を感じ取り反対方向に伸びていく性質は重力抑制下でどう変化するか、水槽内の魚はどう行動するかといったことを同装置で調べられる。コストの膨大な宇宙実験の機会は限られている。シミュレーションによって実際に行うべき内容を事前に見極めることができ、大幅な効率化や効果の最大化が図れるという。
広島大学名誉教授で日本再生医療とリハビリテーション学会理事長などを務める、同社の弓削(ゆげ)類CEO兼CTOらが同装置を開発した。「Gravite(グラビテ)」と名付け、直行2軸の回転などで重力を制御する仕組み。15年から御幸鉄工所(福山市、佐藤晋三社長)に製造を委託し、耐久性と緻密な計算による制御を両立させた。MSSFには16年に通常タイプを初めて納品。今回特注した大型タイプは従来よりも4〜7倍のサイズ(幅187×奥行き155×高さ200㌢)に拡張。通常タイプで持ち込めなかった研究機器も中に入るため、用途が広がる。これを含め現在3台が稼働。NASAの性能比較試験で最高水準が示され、同分野のデファクトスタンダード(事実上の標準機)となった。通常・小型タイプは国内外の研究機関や大学に累計74台を販売。今後、MSSFと共同で開発を進める方針だ。