再生医療ベンチャーのツーセル(南区出汐、松本昌也社長)は、軟骨再生細胞の治療技術「gMSC1-A(自家移植)」の自由診療向けの提供を始めた。まず北海道の釧路孝仁会記念病院が導入を決め、今後も提供先の拡大を目指す。6月には東証プライム上場の科研製薬(東京)と国内の整形外科領域でgMSC1に関するライセンス契約を締結。時間を要する保険診療の承認を科研製薬と共に進めつつ、自由診療の需要開拓と両輪で経営の安定化を図る。
gMSC1はゲル状で、手術時に軟骨の損傷部分に塗布し、組織の再生を促す。患者自身の細胞を使わず、他人の滑膜から採取した細胞を培養・移植するため、大量生産と安定供給が可能となる。2017〜22年に70人を対象に行った臨床試験(治験)で一定の成果を得ており、同病院が今年4月に導入を決めた。全額自己負担となるが、先進的な治療法を希望する患者に治療を行う。今後、新たな医療機関などに順次提案を進める。
ライセンス契約を結んだ科研製薬には、gMSC1の共同開発権、独占的販売権を提供する。ツーセルは対価として契約一時金、開発費用、進ちょくに応じたマイルストーン収入を合わせ、最大70億円を受け取る。かつて中外製薬(東京)と契約を結んでいたが、治験の特定項目で設定した数値目標を達成できず解消した経緯がある。中外との治験を経て保険診療への適応に一定の見通しを得ており、来年から新たな治験を始め、早期の実用化、量産化を目指す。
同社は2003年設立の広島大学発ベンチャー。人体に存在する間葉系幹細胞(MSC)を用いた再生医療に取り組み、独自のMSC製品であるgMSCの研究開発を柱とする。26年3月期決算は、科研製薬との契約による一時金を含めて売上高3億円を見込む。23年に就任した松本社長は「中外製薬との契約解消は想定外だったが、治験で手応えは得ている。再生医療は時間と資金を要する事業だが、2本の事業展開で経営を安定化させたい。次の飛躍への準備態勢は整った」と話した。