公立大学法人広島市立大学 / 前田 香織 理事長・学長
産学連携、地域共創に注力 地域で質の高い高等教育機会確保へ

広島市立大学で、女性初の就任となった前田香織理事長・学長に抱負や大学の運営方針、産学連携の状況などについて聞いた。
就任の抱負、運営方針は。
1994年の開学とともに本学で勤務。当時の先生方の大半が退職されたほか、今年度は国際学部に卒業生の息子さんが入学し、2世代にわたり勉強されており時の流れとともに大きな節目を感じます。大学を取り巻く環境が様変わりする中、大学進学者人口は2040年に3割減となる推計もあり、単に定員確保だけでなく、開学の理想をどう地域に残していくかが大切だと思っています。文部科学省も中教審の答申として今後の高等教育に関する方向性を出し、質の高い高等教育機会を地域で確保するために、各地域の大学間・産学官金などの連携が必要と示しています。これを受けて本学でも新たな取り組みが必要と考えています。
大学間連携では昨年1月、広島市、広島大学、広島平和文化センターと本学の4者で「(社)ヒロシマ平和研究教育機構」を設立し、文科省から大学等連携推進法人の認定を受けました。同機構で本学は広島大学と共に平和に関する研究・教育などの活動の中核を担い、被爆建物である広島大学旧理学部一号館に、平和に関する「知の拠点」形成の取り組みを進めています。
25年度の事業計画、注力分野は。
引き続き、大学DⅩを進めます。トライアル実施していた教育DⅩの取り組みを今年度から本格稼働。「ラーニングマネジメントシステム(LMS)」や電子教科書のアクセスデータなどにより授業単位ごとに学習プロセスを可視化し、学生自身が学習の進ちょくを把握するとともに、教員もきめ細かくサポート。また国際学部・国際学研究科で中高の社会科などの教員免許が取得可能になりました。
最近の研究では、本学と国際医療福祉大学で「音声解析技術による心臓病早期診断」に関する基本特許を共同申請し、日本医療研究開発機構の24年度事業にも採択され実用化に向け動いています。今年3月には本学発のベンチャーとして、地域コミュニティー掲示板アプリの「CocBan(コクバン)」を認定。情報科学研究科の大学院生が起業し、同ベンチャー認定は3件目です。研究の地元での成果利用「エコシステム化」も重視しています。
産学連携の状況は。
24年度から社会連携センターを廃止して地域共創センターを設け、より地域に密着した活動を目指しています。22年発足の産学官連携推進協力会は7月現在で92者が参加。情報科学部の産学連携教育は、24年度は「課題解決型演習」にマイクロンメモリジャパンなど5社(履修計51人)、「システム開発実践」にひろぎんHD、インタフェースなど4社(同68人)、「実践的ICT活用事例」実習先としてディスコなど12社(同196人)に参画していただくなどの実績があります。学生がICT知識を生かす企業戦略を理解できずミスマッチが起こるケースもあり、連携教育が学生の企業理解に役立てばと思っています。
中区役所と連携しデザインやアートで基町地区を活性化する「基町プロジェクト」は、広島の復興という観点からも今後も活動してもらいたいですね。地域から提案されたテーマなどに取り組む「いちだい地域共創プロジェクト」や「市大生チャレンジ事業」はフレスタなどと連携し、公民館でマレーシアなどの家庭料理を作るグローバル食育イベントを開催。安佐南区戸山地区に移住を考える人向けの手引書「戸山くらし」作成や、JA広島市と連携し、広島菜など農作業ノウハウの電子マニュアルのプラットフォームづくりにも取り組みました。
これまでで印象深い仕事は。
やはり広島でのインターネットの普及啓発の仕事ですね。1990年代初めは広島での本格的な接続ポイントが放影研と広島大学にしかなく、本学にも接続ポイントを設置。当時は企業や学校なども大学を経由してアクセスしていました。2009年にインターネット技術の標準化を推進する団体IETFの広島会議を誘致したことも思い出深いです。
PROFILE
前田 香織 (まえだ かおり) 1959年6月22日生まれ、安佐南区出身。広島大学総合科学部総合学科を82年に卒業し、同年工学部助手。90年(財)放射線影響研究所、94年広島市立大学情報科学部助手などを経て、2000年同大学情報処理センター助教授。07〜23年に同大学院情報科学研究科教授。その間に同大学情報処理センター長、副理事、情報科学研究科長・情報科学部長を歴任。23年から特任教授、2()年から理事長補佐を務め、25年4月から現職。専門は情報ネットワーク、インターネットアーキテクチャ。趣味は旅行や美術館巡り。