迫 勝則のカープの独り言 / No.925
8月6日は原爆の日。広島では旧広島市民球場が開場した1957年から52年間、この日に同球場でカープの試合が行われることはなかった。市の条例で、その日を休場日に設定していたのだ。理由は、原爆の犠牲者の霊を慰めるために球場横を流れる元安川で毎年、灯篭流しが行われているからである。そのすぐ隣で鐘や太鼓を鳴らして「かっ飛ばせー」と声を張り上げるのは不謹慎だと思われていた。
ところが2009年にカープの本拠地がマツダスタジアム(南区西蟹屋)に移ってから流れが変わった。市は「スポーツを通して平和への願いを深めたい」として、8月6日の前後に「ピースナイター」を推進する方向にかじを切った。近年、そのピースナイターで劇的な試合が続く。22年8月6日の阪神戦。カープが5―5に追い付いた9回裏。1死二塁のチャンスで、その1カ月前にカープに加わったばかりの秋山翔吾がタイムリーを放ち、劇的なサヨナラ勝ちを収めた。
また24年8月14日DeNAとの一戦。9回表まで1―3でDeNAがリード。マウンドには当時の守護神・森原康平。カープは先頭の小園海斗の二塁打と坂倉将吾の四球で無死一、二塁のチャンスを迎えた。次打者の中村奨成のホームラン性の左飛の後、菊池涼介が打席へ。彼の渾身の一振りは、自身9年ぶりで2本目となるサヨナラ逆転3ランになった。
今季のピースナイターは8月13日阪神戦。どんなドラマを見せてくれるのだろうか。全員が胸に「Peace」、背に「86」を付けて戦う試合が今から楽しみである。
PROFILE
迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「森下に惚れる」「逆境の美学」