メタルワン西日本 / 永田 将史 社長
三菱商事と双日が出資するメタルワン(東京)の地域法人で、鉄鋼商社として中四国、九州、沖縄を管轄する。4月1日付で社長に就き、メタルワンの西日本支社長を兼務する。これまでの経歴や鉄鋼業界の動向、就任の抱負などを聞いた。
今の鉄鋼業界をどう見ますか。
この春までタイに3年間赴任し帰国したばかり。改めて西日本における業界全体の動向を把握しようとしているところだが、少なくとも昨年度までの鉄鋼の需要動向はまずまずだったと思っている。当社のエリア内では、特に九州で半導体やグリーン関連の動きが活況だった。
帰国して驚いたのは、中間流通や一次取引先の価格転嫁が着実に進んでいること。人件費や加工賃の上昇分を転嫁できつつあるのは、業界にとって大きな出来事だろう。
今はトランプ政権の動きが見通せず、通商政策や為替の影響も大きい。着任後1カ月で地域のお客さまを回った中では「今は動かず様子見」の空気感が強いようだ。
今後の経営方針について教えてください。
当社はいわゆる商社であり、一般的に商社が事業投資に軸足を移す流れの中で、現状はあくまでトレーディングの会社である。だからこそ情報力、提案力、顧客理解といった商社の基本機能をさらに高める必要がある。
一方、地域のグループ会社を統括する機能もある。例えば鋼管や建材など品種ごとに市場を押さえているグループ会社を地域でまとめる役割も担っていく。
グループの総合力やネットワーク力を生かし、お客さまの経営にどこまで寄り添えるかが問われている。経営者の抱える課題に共感し、そこに応じた価値を提供する。それが商社の使命だと考えている。
注力する領域はありますか。
カーボンニュートラルやDXといった新しい流れに注目している。例えば洋上風力の建設が進めば、その周辺で必要な鋼材やタンクなどの新たな需要が生まれるほか、マスバランス方式で製造したグリーンスチールの動きもある。アンテナを高くし、お客さまに情報提供・提案する役割を担いたい。
地域の印象は。
西日本は製造業の集積地だと改めて感じた。自動車産業の裾野が広い広島をはじめ、自動車や造船もある九州、建機が盛んな四国など、それぞれに特色がある。当社はありがたいことに各地域の多くの企業と深い付き合いがある。ただその維持だけでは不十分だと思っている。メタルワン、そして三菱商事と双日のネットワークも活用し、より高度な提案の実現に努めたい。
経歴について聞かせてください。
1993年に日商岩井(現双日)に入社し、スクラップや銑鉄などを扱う製鋼原料部を皮切りに、人事部の採用人材開発課に配属。メタルワン設立後は薄板畑が長い。事業部で事業投資先管理やコイルセンターの効率化など、経営に携わる仕事も経験した。2022年からはタイのダイア・モダン・エンジニアリング(DMET)で社長を務めた。
過去の印象深い仕事は。
やはりタイに赴任した経験だろうか。DMETは客先が100%自動車メーカーで、大型プレス部品を手掛けるものづくりの会社だ。ユーザーの意向に応じた製品を生産する現場に、直接携わることができたのは貴重な体験だった。その経験を通じ、SQDC(安全・品質・納期・コスト)や5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底が、日本のものづくりにおける競争力の源泉であることを実感した。
一番苦労したのは、やはり言語と文化だ。語学の習得に苦労したが、片言でも共通の言葉を使い、相手の話を少しでも理解しようとする姿勢が大切だと痛感した。
帰任する前に、マツダと米フォードの合弁会社であるオートアライアンス・タイランド(AAT)向けの取引を新たに始めることもできた。その後、広島に赴任したことに縁を感じている。
大切にする価値観はありますか。
昔、ある方が言った「本質を捉える知」「先頭に立つ勇気」「他者を感じる力」という三つの言葉を意識して仕事に取り組んできた。商社の仕事は、複雑に入り組んだ状況の本質をしっかり捉え、新しいことにチャレンジし、また相手の感情をしっかり理解して信頼関係を築くことがとても重要だ。その意味でこの言葉は指針となっている。
趣味やオフの過ごし方は。
学生時代からスキーをしていたが、今はもっぱらゴルフ。タイ赴任中も仕事兼趣味でよくプレーした。広島では歴史的な建造物や街並みをゆっくりと訪ねてみたい。