
宮島細工協同組合(廿日市市宮島町、宮島伝統産業会館内)と廿日市市は、伝統産業の宮島ろくろ細工、宮島彫りの後継者育成事業に注力している。宮島ろくろ細工は、職人歴68年の伝統工芸士が後継者を育成。宮島彫りは2024年に誕生した伝統工芸士が育成事業を復活した。後継者難となっている宮島大杓子でも昨年秋から新たに育成事業を始めた。国の文化審議会答申を経て今年3月、「宮島細工の製作用具及び製品」が登録有形民俗文化財になり、後継者育成が期待されている。

宮島ろくろ細工、宮島彫りの後継者育成事業は、宮島伝統産業会館が開業した1980年代頃に始まったとされ、今年3月時点でろくろ細工は8人、宮島彫りは7人が受講。ろくろ細工は第2・4日曜に同会館で、県民文化奨励賞などの受賞歴があり広島市立大学非常勤講師を務める伝統工芸士の藤本悟さん(84)が指導。同大・大学院出身で元高校教員の下村祐介さん(29)は、藤本さんに8年学び、2025年に宮島島内の工房を継承し移住した。木の器、盆、一輪挿しなどを制作しながら、24~26年度の廿日市市地域支援員伝統工芸継承担当も務め、昨年11月の「宮島細工の匠展」などの企画運営も行う。24年には同市地御前で工房「木の詩」を構える藤澤敏郎さんも新たに伝統工芸士に認定された。ろくろ細工はかつて島内だけで10軒以上あった業者が現在、村上工芸と小林一松堂だけに。島内職人は4人、島外の職人は兼業を含め5~6人。職人歴68年の藤本さんは「育成講座では、ろくろカンナの道具作りから始め、基本を教え自分の作品を作ってもらいアドバイスする。業者や職人が減っており、伝統技術を次世代に伝承したい」と話す。
宮島彫りの後継者育成事業は、経済産業大臣賞などの受賞歴がある伝統工芸士で組合理事長も務めた広川和男さんが21年に亡くなり中断していたが、22年5月に再開。広川さんの弟子で、24年に伝統工芸士に認定された大野浩(39)、沖田要(43)両氏が講師を務める。2人も組合に作品を卸し、島内の土産物店などで販売。大野さんは「宮島彫りは木材の素地を生かした彫刻で、木製の茶道具や盆などに筋彫りのほか沈め彫り、浮かし彫りなどで立体的に彫刻を施す。伝統工芸士は同じく広川さんの弟子の永谷早登さんと計3人で、宮島小学校の体験学習など普及活動も行っている」と話す。
宮島大杓子の後継者育成事業は、理事長を務める小田隆一さんが25年秋に始めた。ろくろ細工に取り組んだ曾祖父小田権六さんから4代目で、経営する小田木工に後継者がなく、市が所有する北之町工房を組合が借り開講。現在40~50歳代の6人が学ぶ。大杓子は大きいもので5尺(約1・5㍍)になり、野球などの必勝祈願用、企業看板、給食センター、博多どんたくといった祭り用などのニーズがある。組合加盟業者は他に倉本杓子工場(廿日市市)で職人は3人となっており、後継者育成事業を始めた。