サンフレッチェ広島 / 久保 雅義 社長

「新スタジアム効果」を受け、2年連続で過去最高売り上げを更新したサンフレッチェ広島。久保雅義社長は、チケット販売が好調な半面、目新しさが薄れ出す3年目以降の集客策が重要になると力を込める。前期の振り返りや今後の展望を聞いた。
社長就任の初年度を振り返り、率直な思いは。
チームとしては男子が3年ぶり2度目となるJリーグYBCルヴァンカップ優勝、女子レジーナは皇后杯の初優勝という素晴らしい結果を得られました。選手の奮闘はもちろんのこと、ファン・サポーターの熱い思いやスポンサーの力強い支援があってこそだと思います。本当に感謝を申し上げます。
2026年1月期売上高は2年連続で過去最高の約83億円を予想し、エディオンピースウイング開業元年の前年度から3億円弱を上積みする見込みとなりました。収益の柱となる男子の主催試合の観客動員数は、毎試合完売状態のリーグ戦に加えてカップ戦が伸び、前年比8・8%増でクラブ史上最多となる60万2944人を達成。それに合わせてグッズの売り上げも好調に推移しました。
一方で飲食は苦戦。スタジアム開業当初は「世界のさまざまな料理が食べられる」というコンセプトを打ち出し、欧州各国のつまみやアジアン麺、メキシコ料理といった多彩なグルメを用意したものの、物珍しさが薄れ出しています。そのテコ入れ策として、今後は特産の練り物がんすや尾道ラーメンといった「広島らしさ」を味わえるメニューをそろえる方針です。県外から訪れたアウェーサポーターにも楽しんでもらえるとうれしいですね。
男子のリーグ戦チケット収入が頭打ちとなる中、収入源を増やすポイントはなんでしょうか。
男子はアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の集客にも力を注いでいきます。また、優勝賞金は現在戦っているACLエリートが1200万ドル(約18億円)、その先のクラブワールドカップの出場ボーナスは955万ドル(約13 億8000万円)に上ります。
女子は大きな伸び代がある。昨シーズンのリーグ戦平均動員数は5482人で、前年比88・6%増と大幅に伸長しました。女子リーグ戦全体の約2100人を大きく上回り、全12チームの中でも群を抜いています。この数値には、「レジーナをもっと知ってほしい」という強い思いで選手自らが考案したさまざまな取り組みが影響しています。

特に話題を集めたのが、昨春の三菱重工浦和戦で1万人の集客を目指した企画「自由すぎる女王の大祭典」。SNS告知から地域営業まで幅広く取り組み、女子リーグ戦の最多記録となる入場者数2万156人を達成しました。今年も埼玉戦(3月28日)で同様の「2万人プロジェクト」を実施する予定です。ファンとの接点づくりにはこうした活動を継続することが大切ですし、男子では取り組みにくい催しをテストマーケティングのように実行できるのも、男女のチームを持つクラブならではの強みだと捉えています。
また、女子は男子と比べて環境の整備などさまざまな面で後れを取るのも事実です。このたび府中町と連携協定を締結し、町内のワクトリーパーク揚倉山(揚倉山健康運動公園)を28年4月から練習拠点とします。グラウンドの人工芝化や夜間照明の設置に加え、新設するクラブハウスも優先的に使わせていただくことで、より強固なチーム体制を構築でき、選手獲得面でも有効に働くと考えます。現在、練習拠点にしている広島経済大学(安佐南区)とも多様な面で連携を続ける方針です。男子も安芸高田市吉田町の日南山丹比グラウンドを無償で譲っていただき、ジュニアユース(中学生)とユース(高校生)合同の寮を新築します。こうした地域の支援は大変心強く、選手育成やチーム強化を通じて恩返ししたい。
スタジアムの「施設収入」の状況はいかがですか。
会議室やラウンジの貸し出しが堅調に推移しています。会社説明会や入社式、異業種交流会、大学のゼミの発表会など多様なシーンに活用してもらい、食事も楽しめるラウンジの予約は8割超が埋まる月もある状況です。今年の成人の日(1月12日)には「二十歳のつどい」を初めて開き、約1万人が参加する大変な盛況ぶりでした。時間貸し駐車場を含めた施設収入は現在6億円ほどで、近い将来に10億円規模へ引き上げたい。ピッチの芝の張り替え時の有効活用も重要な施策の一つと捉えます。他スポーツの利用をはじめ、当スタジアムの特長の一つでもある「音と光の演出」を駆使したイベント実施も検討しています。
PROFILE
久保 雅義 社長 1972年12月27日生まれ、東区出身。米大手事務用品小売りのオフィス・デポ日本法人を経て、2012年サンフレッチェ広島入社。企画広報部長や営業部長、取締役副社長などを経て25年1月から現職。