広島三越 / 和田 金也 社長
個客業について教えてください。
三越伊勢丹HDは、不特定多数のマス顧客を対象とした〝館業〟から、一人一人のお客さまとのつながりを太くし、個客視点で、百貨店の枠を超えた多様な商品やサービスを提供する経営の基本方針を打ち出した。2022〜24年度でカードやアプリなどでつながった顧客データを基に、年間購買額や特性などに応じて個別のマーケット活動や外商顧客へのセールス活動を強化するなど顧客基盤の確立を図り、個客業へ変革する足場を固めてきた。4月に始動した新中期経営計画(25〜30年度)で個客業へ本格的にかじを切る。
もともと百貨店は外商中心に顧客とのつながりを重視し、信頼関係を築いてきた。お客さまを深く知ることで真に求められている商品やサービスを提供し、生涯顧客化を図ってきた実績がある。人海戦術で成果をつなげてきた販売手法だが、データの蓄積やデジタル技術を使った分析、一定の条件に該当する顧客を抽出してアプリを通して伝えることができるようになったことで、限られた外商顧客でなくとも多くのお客さま相手にこれが可能になる。デジタル技術と人の力の融合が大きなポイントになる。一定額以上の購買客には専用ラウンジなど特別な待遇も用意。でっかい館で集客しても、不特定多数の顧客とはつながりが生まれにくい。個に注目することで、デジタル技術を活用しながらヒューマンタッチで顧客との接点を増やす。
取り寄せと送客で求められる商品やサービスを提供していますね。
世界的に有名なラグジュアリーブランドは莫大な投資とそれを賄う巨大なマーケットが必要。人口減少が進む地方都市では扱いが難しくなりつつある。当店ではラグジュアリーブランドはないが、買い回りがしやすいコンパクトなスペースで、のれんにふさわしい高感度で上質な商品を厳選し、顧客の期待に応えたい。
一方で、ラグジュアリーブランドや宝飾、高級腕時計、アートなどは、世界トップクラスの品ぞろえを誇る伊勢丹新宿本店や三越日本橋本店、福岡の岩田屋本店から取り寄せで対応。逆に首都圏や福岡の店舗への来店希望客には、事前に要望やご覧になりたい商品などの情報を各店のストアアテンダントと共有。スムーズな買い物をサポートする。広島三越の外商担当が同行して店内をアテンドするケースもある。顧客のあらゆる要望に応えるストアアテンドも百貨店でこそのもてなしだ。
生涯顧客化へ、百貨店事業を中核にグループの金融や不動産、その他関連の事業を連携させる〝連邦活動〟を推進。ブランド対応や全国グループ20店の取り寄せのほか、マンション探しや別荘のリフォーム、「ヨットに乗りたいが、何から始めればよいか」などあらゆる要望や相談に応えていく。とにかく三越に頼めばどこかにつないでくれる。そうした信頼を厚くしていきたい。広島の地場企業とのアライアンスも視野に入れ、広島が百貨店のない県にならないよう生き残りを図っていく。