その他 2020.04.09

小林カズヒコの経営者のための実践マーケティング講座 第28回

経営者が警戒すべき最悪の数字

 近代マーケティングのパイオニアである故ダン・ケネディ氏は生前、「ビジネスにおける最悪の数字は『1』である」と、再三言及していました。一つのターゲット、一つの事業、一つの商品、一つの生産拠点、一つの仕入先、一つの納品先、一人の有能な社員など「1」に依存する企業は市場ニーズの変化やアクシデントの干渉から逃れられず、明日にでも廃業に追い込まれる危険性がある。だから「1」がなくなった時のことを常に想定し、代替案を用意すべし、と。この警告がいかに的を射ていたかが、世界中で感染が急拡大する新型コロナウイルスにより、過去に例を見ないスピードと最悪のボリュームで証明されてしまいました。
 例えばインバウンド需要という1。観光地の土産物屋やホテル・旅館、百貨店、観光バス会社、旅行代理店などは1〜2カ月、中国からの観光客が途絶えただけで大半が壊滅的なダメージを被っています。希望退職者募集やリストラに踏み切り、早くも倒産してしまった企業も。また、感染拡大を抑制する目的で、ライブやスポーツイベントも続々と中止や延期となり、これのみに依存してきた業者も途方に暮れています。
 日本の経営者は、自らが身を置く市場が好調な時ほど「周りも景気がいいし明日もきっとうまくいくだろう」という根拠のない幻覚に陥り、リスク管理を怠りがちです。これは「多数派同調バイアス」と呼ばれる危険な認知心理現象によるもので、災害時などでも逃げ遅れを引き起こします。私は事業が傾いた企業を実践的なマーケティング手法の導入でいくつか再生してきましたが、未然ならともかく、すでに起こってしまったクライシスを取り除く自信はありません。「別の仕事を立ち上げましょう」と言うしかないのです。
 幸いにもまだ新型コロナウイルスの影響を受けてない企業の経営者は、これを機に自らのビジネスに「1」が存在していないか至急チェックするべきです。「1」に依存している状態をそのまま放置すれば別のクライシスにより、淘汰されることになるでしょう。AIやIoT、5Gなど新しいシステムが今後次々と市場に投入されるのは確実で、これまで成り立っていた事業が突然心不全に陥るケースが激増するからです。
 ただ闇雲に多角化せよと言うのではありません。自分が「○ ○屋」であることに拘泥せず、常にあらゆる市場を観察し、顧客にとって最も価値あるものはなにかを考え、そこで見えてきたアイデアを小さくテストしながら育てる。そして脈ありと見れば新しい事業として打ち出す。これが2020年以降を生き残る経営者マインドです。目を向けるべきは提供している商品やサービスではなく、市場のニーズであるということ。それはまた、大変不安定で移り気なものであることを、どうか忘れないでください。

この記事はいかがでしたか?
県内約2,500社の企業・決算・役員情報などを検索!
PROFILE
プロフィール画像

小林 カズヒコ 
コピーライターやアートディレクターを経て、中四国初の本格的なマーケティングコンサルに転身。中小企業経営者や個人事業者へのコンサルほか、金融機関からの依頼で経営が悪化した企業への助言も実施。診断や相談先メール(匿名不可)marketingdefense@harukomania.com

関連記事

料金プランへの誘導バナー・デザイン差し替え

おすすめ記事

広告
広告

最新ランキング(2026.3.24更新)

企業データベース