一社員ができるマーケティング術
前回、読者からの「マーケティングなど役に立たないと言う上司をどう説得すればいいか」との質問に「まず一社員ができることを実行されてみては」とお答えしました。そこで一例として、特殊機器専用リース業の営業員が社長の許可を得ずに実践し、効果を上げた「動画」を使う手法をご紹介します。
同社の扱う製品は優れた機能ですが、少し問題が。それは取扱説明書、いわゆるトリセツが難解で、お客さまから「意味がよう分からん」と声が上がっていたことです。その度に営業員が出向き説明する、時間効率の悪い対応を繰り返していました。特殊な機器のトリセツは開発・技術者の説明がそのまま文章化され、専門用語が主体の固い文章である上、外国製品の場合は誤字や誤訳が多く、まっとうな日本語になっていないケースもあり一層難解です。そこで営業員に、機器ごとの想定問い合わせに対応する「トリセツ動画」を作ってもらったのです。
高価な機材などは不要です。機器の操作方法やメンテナンス、さらには純正のトリセツに書いていない裏技まで、営業員自身がスマホで撮り、お客さまにいつものように語りかける調子のナレーションで構成した、短めの簡易な動画です。これを複数シリーズで用意し、お客さまのスマホに送信。お客さまは手のひらの上で動画を見ながら機器を操作できるし、必要に応じていつ何度でも再生可能なので、非常に分かりやすくて便利と好評を得ました。しかし、これだけでは「お客さまが喜んだ」で終わるので、動画の最後に必ず一言を加えるようアドバイス。関連するグレードアップパーツやオイルなどのお得な消耗品情報、展示会の案内も随時追加したところ、それらの受注が増え、継続性もアップしたのです。
メーカー作成の解説DVDは、どこかよそよそしく、個々の使用者のニーズに応えにくい。逆に、顧客が何を欲しているかを日頃からダイレクトに把握できている営業員であれば、スマホ一つで「かゆい所に手が届く」動画ができます。他社が同じ商品を扱っていても「あなたから買おう」と指名されるようになるのです。これがマーケティングでいう「顧客に特化したカスタマイズ」です。「簡易な映像では失礼」という考えは捨てましょう。話を難しくして手間を取らせることのほうがよほど失礼です。トリセツ動画は、ほぼあらゆる業態に応用できます。食品メーカーならおいしい食べ方のレシピなど、サービス業であれば新設備やスタッフの紹介も喜ばれるかもしれません。社員の自主的なマーケティングへの取り組みはモチベーションアップに直結し、数字が上がれば、上層部も認識を改めるはずです。
好きな仏教の言葉に「随処作主立処皆真」というのがあります。上司や他人任せではなく、自ら考え主体性を発揮して行動することこそが、あらゆる道を開くと思うのです。
PROFILE
小林 カズヒコ
コピーライターやアートディレクターを経て、中四国初の本格的なマーケティングコンサルに転身。中小企業経営者や個人事業者へのコンサルほか、金融機関からの依頼で経営が悪化した企業への助言も実施。診断や相談先メール(匿名不可)marketingdefense@harukomania.com