シンプルルールが企業を救う
多様な業態や企業規模の経営者にコンサルする中で、不思議に思っていたことがあります。アドバイスを迅速に実行し、2、3カ月で成果を出し始める人と、「なかなか忙しくて」「心の準備が」などと、いつまでも行動に移さない人がいるのです。設備投資も必要なく、リスクも低いのになぜだろうと考えていたところ、共通する傾向に気がつきました。
今やるべきことに集中できず、だらだらと先延ばしをしがちな経営者は、問題点を保留する癖が染み付いている。それゆえ悩みで頭がいっぱいになり、何から手をつけていいか分からないまま日々を無為に過ごし、結果的に経営の停滞を招く。では、複数のややこしい問題にとらわれず、迅速かつ適切に判断を下し、経営を良い流れに乗せるにはどうすれば良いか。私のクライアントで効果を上げている手法が「シンプルルールの策定」です。
複雑な物事をシンプルに捉え直す
「シンプルルール」はマサチューセッツ工科大の研究者ドナルド・サル氏らが提唱するもので、文字通り、3〜4つ程度のごくわずかな単純な決まりごとに基づいてクールに物事をさばくのが特徴。一般的にルールというものは、複雑でなければならないと思われています。確かに安全・衛生面の確保や品質を保つためのチェックリストなど、多岐にわたる細かな決まりごとがあるからこそ、ミスを防げる場合もあります。しかし、方向性のかじ取り、取捨選択においては、その時々の意志の強さや勘に頼るのではなく、一番大切な目的から逆算して導き出した、簡潔かつ明瞭なルールの方がはるかに有効であることが、多くの成功事例からもうかがえるのです。
ある物流会社は、各部署が持ち込んだ28件もの経営改善プロジェクトにより混乱を来していましたが、話し合いでは解決の糸口が見つからず、プロジェクトを振り分けるシンプルルールを策定。こんな具合です。「1、急ぐ必要がある」「2、あまり急ぐ必要がない」「3、全く必要がない」の3ランクに分けるという、拍子抜けするほど簡単なものでしたが、この優先順位に従うことで次々に問題をクリアし、業績の大幅回復に成功しました。
これは人事にも有効です。映像ストリーミング配信事業の雄、ネットフリックスの人事ポリシーは「社内に悪い影響を及ぼす人を雇わないよう注力」し「採用ミスに気付いたらすみやかに解雇」とブレがなく、感情の付け入る隙はありません。グーグルの創業当初からのシンプルルールは「最高レベルの人材の確保」であり、そのために「履歴書のちょっとした瑕か疵しも見逃さない」を順守。間違いを見つけたら即アウトです。徹底的にそぎ落とすことで、目指すゴールへの道筋を照らすことができるシンプルルール。三笠書房「SIMPLE RULES 仕事が速い人はここまでシンプルに考える」が参考になります。
PROFILE
小林 カズヒコ
コピーライターやアートディレクターを経て、中四国初の本格的なマーケティングコンサルに転身。中小企業経営者や個人事業者へのコンサルほか、金融機関からの依頼で経営が悪化した企業への助言も実施。診断や相談先メール(匿名不可)marketingdefense@harukomania.com