営業は情報をしっかり共有できているか
秘密のレシピは宝の持ち腐れ
ある精密機器メーカーから、会社案内用パンフレットの製作依頼がありました。営業チームの顧客開拓用だったため、私はまず広報担当者に「営業の方を何人か集めていただき、それぞれのキラートーク(殺し文句)をヒアリングしたい」と申し出ました。営業のオファーの中で、何が決め手となり、お客さまが「よし分かった、買おう」とクロージングに至ったのか、それを知りたいと思ったのです。
後日、担当者から「それぞれの営業が独自に工夫して生み出した秘密のレシピだから、話したくないと言っている」という返事がありました。これは、予想していた返答でした。過去に他社の同様の事例で、同じ理由で断られていたからです。
この「社員同士で競わせる」方式は、日本の多くの企業に見られる慣習ではあります。確かに営業のモチベーションアップにはある程度の効果があるかもしれませんが、最前線で日々繰り出される「必殺ワザ」がシェアできていない状況は、会社全体から見ると看過できない大きな損失に他ならず、前時代的な手法と言わざるを得ません。また、会社案内用パンフレットは、生身の営業員の代役も担う「紙の営業員」です。キラートークが反映されていない会社案内など、作るだけ無駄な役に立たない媒体です。
一方、さえている経営者は営業にキラートークを公開させ、「こういうオファーでうまくいったから、みんなでやってみよう」と共有しています。最初は公開を渋っていた好成績の営業員も、手法を教えた人が成果を出し始めると、自分自身の時より、もっと大きな満足感を得るという調査結果も出ています。当然、営業チーム全体の結束力アップにもつながるわけです。
さて、冒頭でお伝えしたように、キラートークのヒアリングを断られた私はどうしたか。通常の広告代理店ならあっさり諦めているでしょうが、私は上記のような説明をし、納得していただいた上で、営業から秘密のレシピを聞き出しました。こういうつまらぬ慣習をしっかり指摘し、正す手助けをするのもマーケティングコンサルの役目と考えます。
読者の質問コーナー
Q:コトラーやドラッカーなど経営の専門家の本をかなり読んだが、ビジネスに反映できない。
A:両氏ともに、とても正しいことを言っていると思います。ですが、たとえばボクシングの技術書を読んだだけで実際に強くなるでしょうか。実践で使えるマーケティングはまず、わが身の弱点や特性のチェックからアプローチします。問題のある箇所を取り出しては修理し、効率の良さを生み出すものへ替える。この繰り返しです。自学も重要ですが、その辺の見極めが難しく、しばらくは専門家に任せた方が大幅な時間の節約になります
PROFILE
小林 カズヒコ
コピーライターやアートディレクターを経て、中四国初の本格的なマーケティングコンサルに転身。中小企業経営者や個人事業者へのコンサルほか、金融機関からの依頼で経営が悪化した企業への助言も実施。診断や相談先メール(匿名不可)marketingdefense@harukomania.com