もみじ銀行は4月に8年ぶりに頭取が交代した。平中啓文新頭取に、就任の抱負、今後の注力分野、印象深い仕事などを聞いた。

-就任の経緯と抱負をお聞きします。山口フィナンシャルグループの本部で営業や戦略を担当し、昨年6月からもみじ銀行の専務を兼任しており、頭取就任は年明けに山口フィナンシャルグループの椋梨敬介社長から言われました。椋梨社長も山口、広島、九州北部の営業エリアの中で、広島エリアの重要性を認識しており、「広島でしっかり結果を出してほしい」と託されました。専務として「もみじ銀行にはまだまだ広島でやれることがある」と思っていたので、これからも広島経済の発展に専念します。お客さまの話をしっかり聞き、融資だけでなくグループ会社のサービスを提供するなどして支持を高めたいですね。-マイナス金利解除の対応は。金利への対応はどこの銀行でも共通の課題です。現場で金利の上昇を体験した人がほとんどいないのが実情で、法人、個人の営業担当者が勉強会などで「金利が上がるとはどういうことか」、「金利上昇局面でどうお客さまに寄り添うか」などを学んでいます。法人は今まで営業利益がそのまま業績に反映されましたが、支払利息が加わり、経常利益が重視されるようになります。預金金利は既に上がっていますが、貸出金利はお取引先の状況を踏まえながら、慎重な対応が必要になると思います。-今後の注力分野は何ですか。もみじ銀行の脱炭素関連融資などのサステナブルファイナンスは、23年度実行額が約360億円となり、うち環境分野・気候変動対応に関する融資は約70億円です。22年度〜31年度までにサステナブルファイナンスは累計1550億円以上(うち環境・気候変動関連550億円以上)の実行を目標にしています。脱炭素に取り組む入り口として、グループ会社のYMコンサルティングがCO2排出量の見える化支援や、脱炭素に向けたロードマップ策定支援を行っており、融資以外の選択肢も提供しています。環境分野では、太陽光発電、バイオマス発電のほか、今後は洋上風力、工場のライン更新によるCO2削減も期待されます。また、脱炭素に限らず、各地域共通の課題について、人材のYMキャリアや地域活性化支援のYM‒ZOPなどと連携したサービスを提供したいです。船舶や海運、船主、関連企業向けのシップファイナンスの24年3月末時点の残高は約1220億円と伸びており、今後も強化します。山口銀行今治支店にシップファイナンス室を設置し、もみじ銀行呉営業部にも専担者が常駐しています。山口FGと愛媛銀行で3月に広島で海事産業交流会を開いたところ、265社・570人にお集りいただき盛況でした。海事産業は瀬戸内地区、広島に欠かせないと思っています。船舶の分野でも環境対応が重要で、現在は燃料の重油に加え、アンモニアや水素など環境配慮型燃料を組み合わせる二元型がトレンドになっています。環境に配慮して船舶の航海回数を少なくするため、船舶の大型化も進んでおり、こうしたトレンドやニーズの変化に対応していきます。人事面では今年度、専門コースを新設しました。従来の支店長、支店長代理などの役職に加え、例えば経営コンサルタントなど専門性が高い業務の担当者を評価・処遇する制度です。-これまでで印象深い仕事は。本部勤務が計7年で、他は広島県や福岡県の支店勤務が長く、営業畑を歩んできました。初任地は山口銀行広島駅前支店で、1991年から6年間勤務。当時はバブル崩壊が始まっていましたが、広島は94年のアジア大会を控え、アストラムラインや西風新都の整備などもあり地域経済は活発な中、がむしゃらにお客さまを回っていました。振り返ると、銀行員の基礎は広島で身に付けたと思っています。北九州銀行発足時には福岡市の新宮支店の開設を担当。同行では久留米支店長や福岡支店長を務めました。自分の経験から、営業には特別な策はなく、お客さまときちんと話し、何を期待されているかを知ることが大切だと考えています。

プロフィル

ひらなか ひろふみもみじ銀行頭取。1991年山口銀行入行。長府東支店長、カスタマーコミュニケーション部長、山口FG執行役員法人事業本部長、山口銀行小郡支店長、北九州銀行執行役員福岡支店長、山口FG執行役員企画統括本部長兼人事・総務統括本部長などを経て、2022年4月から山口FG常務執行役員金融事業本部長、23年6月からもみじ銀行取締役専務執行役員を務めた。1967年11月3日生まれ、山口県山口市出身。

担当記者:大谷

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