2023年の広島県経済は、新型コロナが収束し、製造業でも半導体供給が戻るなど回復基調となった。広島市ではサッカースタジアム開業やJR広島駅再開発など、都市開発が進んでいる。地元金融機関トップに、24年の県経済の見通しや経営方針を聞いた。
ー県経済の現状と新年の見通しは。全般的に上向きで、特に製造業は防衛関係の受注が増えています。内航船の造船も堅調で、金型は新型車が一段落し少し厳しいようです。コロナ禍から回復した飲食業は人手不足で稼働席数を抑える店があり、深夜営業店はコロナ前のマインドに回復しきれていないようです。ホテルは人手不足があるものの、宿泊単価を上げ業績は堅調です。運送業界は24年問題があり人手不足や従業員の賃上げに対応できない企業が出ており、二極化し企業間格差が出ています。ー全国の信組業界の動向は。4月までにはマイナス金利が解除され、金利が上がると思います。貸出金利息収入の増加を見込み銀行株が上がっていますが、保有債券の価格が下がり含み損が出た場合は処理が難しいところです。23年の全国の信組の合併は、新潟県のはばたき、三條、新潟鉄道の3信組の1例だけでしたが、預貸率が低く規模の小さい信組は、含み損増加などで資本増強が必要になる可能性があります。必要であれば私が会長を務める全信組連で支援する方針です。ー24年の市信用の注力分野は。今年もフェイス・トゥ・フェイスで預貸業務に特化します。キャッチフレーズは「継続は目標を育む」です。他の金融機関の店舗の統廃合が増え店舗網が粗くなっており、攻めるチャンスでもあります。一方で信組業界でもデジタル化が喫緊の課題で、市信用では24年から4〜5年かけ、スマートフォンによる預金預け入れ、融資申し込み、一部融資審査などのデジタル化を本格的に進めます。しんくみ情報サービス(SKC)が開発するシステムを導入するほか、一部を自社開発。専門コンサルと契約するほか、デジタル関連の職員も2〜3人中途採用する予定です。新入職員は24年春に45人、25年春は60人を予定。24年春に大卒の初任給を23万3000円に引き上げ。人材確保のため、大卒は翌年にも2000円上げる方針です。23年は海田支店と五日市支店を移転新築しました。事業性融資の新規開拓など店舗の新築効果が出ています。24年は府中支店と薬研堀支店、25年は南支店と鷹の橋支店の移転新築オープンを予定しています。ーゼロゼロ融資の返済状況は。ゼロゼロ融資の23年9月末時点の約定返済開始は53.8%でした。23年度下半期は27%、24年度は12.9%、25年度以降は6.3%を見込んでいます。23年11月末現在で、ゼロゼロ融資から伴走支援型への移行と、追加融資(真水)を含めた伴走支援型融資残高は743件で計246億5200万円です。