松藤研介会長からバトンを受け継ぎ、4月1日付で社長に就いた。社長交代は約7年ぶり。4月策定の中期経営計画では電力事業を新たな成長戦略の柱に位置付け、イノベーション創出を目指す。2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みなど、展望を聞いた。
-就任の抱負は。身の引き締まる思い。「地域社会から信頼される会社をめざす」という経営理念を踏襲し、その信頼をさらに深めていきたいと考えている。グループの中期経営計画ではガス事業の「深化」、イノベーションの「創出」、経営基盤の「強化」の三つを柱に据えた。ガス事業では石油や石炭などを使っている企業などに向けて天然ガスやLPガスへの燃料転換を提案し、低炭素化のお手伝いをしたい。将来的には現在の都市ガスの原料である天然ガスをCO2と水素から合成するカーボンニュートラルメタンに置き換え、「ガス自体の脱炭素化」に取り組んでいく。-グリーン電力について。1月から販売を始めており、新成長戦略の柱に位置付けている。再生可能エネルギー由来の非化石証書を活用し、CO2排出量を実質ゼロと見なせる環境にやさしい電気だ。この付加価値に加え、114年にわたり地域にエネルギーを供給してきた信頼を強みに営業展開し、26年度に1万5000件の契約を目指したい。バイオマスや風力発電事業など、再生可能エネルギー電源の開発にも継続して取り組む。-経営基盤の「強化」について。人的資本の価値向上と確保のための業務改革を実行中だ。例えば、当社とグループ会社の間で、各社が担う業務を最適化したり、22年にグループ会社を含めた組織横断型の「DX推進会議」を立ち上げ、DXの推進による効率化を進めている。一朝一夕にはいかないが、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入など、試行錯誤しながら成功事例を全社で共有し、業務を平準化するなど働きやすい環境を整えていきたい。-環境保全活動について。23年11月に山口県森林組合連合会と森林の循環利用事業に関する協定を結ぶなど、森林の保全活動に取り組んでいる。中国電力と共同で設立した海田バイオマスパワー(株)では、未利用木材なども発電燃料としている。木を切って使わせてもらったら新しく植林する。大きな利益が出るわけではないが、森林組合と連携することで、地域の活性化にもつながる。このほか県内に加え北海道でも森林を購入しており、地道に続け広げていきたい。-座右の銘は。「できない理由を探さない」ことだ。まずはとにかくやってみる。私は液化天然ガスを安定的に安く柔軟に調達するための業務に長く携わった。輸送船の所有権の買取や、大型船を受け入れるための航路のしゅんせつ工事を進めるなど、周りが無理だと言うことに粘り強く取り組んできた。諦めが悪いとも言うが、私利私欲ではなく地域を発展させるためにという思いで仕事をすると、不思議と周りが助けてくれるようになる。最初は「できれば良いな」くらいで取りかかるが、だんだんと期待されるようになり「絶対実現してくれ」となる。そのプレッシャーに耐えてやり抜くといったん立ち止まりたくなるが、しばらくするとまた挑戦の意欲が沸いてくるから不思議だ。知的好奇心が旺盛で事柄を深く追求し行動力を持って忍耐強く取り組んでいく、そうした姿勢を上司が見てくれていたのではないかと考えている。
プロフィル

なかがわ ともひこ1963年3月23日生まれ、安佐南区出身。広島大学大学院工学研究科修士課程を修了し1987年入社。執行役員原料部長、取締役常務執行役員経営企画部長などを経て、4月1日から現職。仕事一筋だったと笑う一方、休日は80〜90年代の洋楽をはじめ、ニューミュージックや歌謡曲まで幅広い音楽をたしなむ。
担当記者:高見