マーケターとして、カルビー勤務時代に長らく30億円台で頭打ちが続いていたシリアル食品「フルグラ」の売り上げを5年間で約10倍に急成長させた。アヲハタ入社の経緯や今後の目標について聞いた。

-カルビー勤務時代にシリアルを日本に浸透させました。長らく30億円台で頭打ちが続いていたシリアル食品「フルグラ」の年間売り上げを最低でも100億円に伸ばすことが私の使命でした。そこでマーケティングのやり方を従来とは大きく変え、250億円のシリアル市場ではなく、17兆円の朝食市場をターゲットに据えて「グラノーラ」という新カテゴリーを創出する戦略を採りました。世の中で一番朝食に困っているのは子育て中の働く女性だと考え、子どもに出しても手抜きの罪悪感を感じないブランディングを意識しました。メーカーに身を置いていると、ものづくりに一生懸命になるあまり、消費者の視点をついつい忘れがちです。徹底的に消費者目線で考えることが大切だと感じています。-アヲハタ入社の経緯は。キユーピーグループにとって大切な存在であるアヲハタのブランド力を高めてほしいという話がありました。私はマーケターとして、担当する商品を好きになれるか、自信を持って人に勧められるかを重視しています。アヲハタの商品は質が高く、国内外ともに伸び代があると思ったのでぜひ挑戦してみたいとお受けすることにしました。-就任後すぐに東京でポップアップカフェを開きました。 春に大きな施策を打ち、夏にも続けて展開するとその年は伸びるという経験則があります。内示をもらった瞬間から、流行発信地の表参道でポップアップカフェを開くことを計画していました。調査データによると、若年層の間でブランド認知度が低下していることが分かり、30代以下の若い女性をターゲットに設定。「フルーツのアヲハタ」を全面に打ち出し、凍ったままでやわらかい冷凍フルーツ「くちどけフローズン」を使ったパフェや、果実本来のおいしさを楽しめるフルーツスプレッド「まるごと果実」(ジャム類)入りのクリームソーダを提供しました。自社商品の幅広い用途を紹介することで新たな市場を開拓したいと考えています。ポップアップは3月7〜13日の短期間でしたが、テレビや新聞、SNSなどで広く取り上げられ、大きな反響がありました。今後はアヲハタが長年にわたってこだわってきた原料や加工プロセスといった商品開発におけるストーリーを紹介し、消費者から共感が得られるよう工夫していきたい。-今後注力する分野は。 フローズン事業です。冷凍市場はここ数年一貫して拡大しており、小売店の売り場面積や、家庭用の冷蔵庫に占める冷凍室の割合も大きくなってきています。2023年に発売した「くちどけフローズン」は果汁をフルーツ内部にしみ込ませることで凍っていてもやわらかく、香りや味を楽しめる商品に仕上げました。今は年間売り上げ数億円ですが、将来は50億円規模に伸ばしたいと考えています。一番難しいのは既存のジャム商品と売り場が違うことです。商談のアポイントを取るところから地道に活動し、早期に全国のスーパー5000店舗への拡大を目指します。

プロフィル

1974年埼玉県生まれ。慶応義塾大学法学部を卒業。2001年外資系広告代理店のマッキャンエリクソンに入り、広告のストラテジックプランナーとしてBtoCマーケティングに従事。これまで「ボルヴィック」や「フルグラ」のマーケティングを担い、日経WOMAN主催の「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016 ベストマーケッター賞」受賞。20年にキユーピーで女性初・最年少の上席執行役員に就任。23年12月のアヲハタ執行役員を経て、24年2月から研究開発本部とマーケティング本部の責任者。

担当記者:柴田

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