昨年12月25日付で創業者の父・静司氏(現会長)の後を引き継いだ。1987年の設立以来、社長交代は初めてとなる。東広島への本部機能移転に加え、リフォームや家具販売など周辺事業拡大をけん引。少子高齢化などで中長期的に住宅着工棟数が減る中、「創建ブランド」をいかに引き上げていくか。その戦略を聞いた。
ー現在の市況をどう捉えていますか。ローコスト住宅メーカーや建て売り事業者の台頭で競争が激化する中、注文住宅ビルダーとしてのブランドイメージを一層強固にしていく。現在放映しているカープ選手を起用したテレビコマーシャルでは、「注文住宅の創建ホーム」という強いメッセージを発信している。オーダーメードで顧客一人一人の思いを形にする。この信条に変わりはない。物価や光熱費の高騰などを受け、高気密・高断熱住宅への関心が高まっている。これらのニーズに対応した旗艦ブランド「GIAZO(ジアゾ)」シリーズを展開しているが、これまで以上の性能を備えた高スペック商品も今後は必要になるだろう。商品開発に全社を上げて取り組んでいく。少子化や核家族化で注目が集まる平屋にも力を入れる。三原市にモデルハウスを構えるほか、広島支店を置く安佐南区にも近く建築予定だ。広い用地の確保が難しい広島市中心部向けの狭小3階建てなどのラインナップ拡充も進める。ー東広島への本部機能移転を主導されました。県央で人口が増える東広島を重要拠点に位置付け、本部移転の一大プロジェクトを中心となって推し進めた。2年半前に新設した複合施設「ライフ&カルチャーマーケットL/C」はリフォーム、家具・インテリア、外構・エクステリア工事を一貫提案できる場で、衣食住に関する多様なイベントも開き、幅広い顧客との接点づくりに役立っている。2023年の供給棟数226棟のうち、東広島は77棟の実績を上げた。当初、大型投資への社内の風当たりは厳しかったが、ここでしっかりとした基盤を築けば拠点を置く広島、竹原、三原、福山に良い波及効果が生まれると、会長など幹部との議論を重ねた。今では大きな手応えを感じている。ー26年にグループ売上高100億円を目指しています。住宅着工棟数が減少傾向にある中、新築だけで業績を伸ばしていくのは難しい。グループ全体の23年12月期は前年比1.4%増の約85億円(単体・約80億6000万円)で、うち約14億円がリフォームや外構・エクステリア工事、家具販売などの新事業だ。今後は特にリフォームと非住宅(店舗やホテルなどの建築)分野に力を入れていく。リフォームは26年までに現在の売り上げ10億円を2倍に引き上げる方針で、東広島や広島に加え、12月に新築移転した竹原の新本社に店舗を構えて需要を掘り起こす。空き家対策や中古住宅の買取再販などの領域にも挑戦したい。非住宅は瀬戸内ゴルフリゾート(竹原市)でヴィラ形式の宿泊施設7棟を手掛けたほか、尾道のホテルや東広島の葬儀場を受注するなど、ここ2年で大きく伸長。専任部隊の立ち上げを視野に人材確保を急ぐ。ー今後の展望を教えてください。これまで30年以上続けて新卒採用に取り組んでおり、当社と共に歩んできた社員たちが課長などの役職者に成長してくれた。これは大きな財産だ。事業継承した「第2創業期」の今、彼らを幹部に育て、より強固な組織にしていく。03年に立ち上げ、社長を務める広告代理業のTRADE MARK(中区鉄砲町)のノウハウも生かす。県内の同業に先駆けてインスタグラムなどSNSを活用したデジタルマーケティングやブランディングを積極的に進めてきた。コロナ禍で住宅展示場の集客が落ち込んだ同業が多い中、当社は増収増益を達成してきた。社内のDX(デジタル変革)にも取り組んでおり、展示場のイベントなどで取得した顧客データを集計するだけでなく、分析して提案営業に生かす体制づくりに力を注ぐ。これはまさにマーケティング会社の得意分野だ。長年培った良い風土を大切にしながら、時代のニーズに合わせて変わる勇気を持つ。新たに理念に掲げた「ハウスからライフへ」を胸に、全社一丸でまい進する。
プロフィル

やまもと しん1973年4月12日生まれ、兵庫県出身。広告会社を経て2003年広告代理業のTRADE MARK設立。創建ホーム外部非常勤役員を経て13年入社。20年1月に専務就任。