どこかワクワクするような新井貴浩監督の2年目がスタートした。しかし「プロ野球2024パーフェクトデータ選手名鑑」(宝島社)の戦力分析によると、阪神85点、カープ65点、DeNA65点、巨人75点、ヤクルト75点、中日70点だった。つまり昨季2位だったカープは、DeNAと同点の最下位評価なのである。しかし、長丁場のペナントレースにおいて、データ上の戦力だけで順位を予想するのは難しい。強いて言えば、本気で戦うチームが強い。新井監督の采配は予想がつかない。例えば昨季の盗塁企画数はセ・リーグでダントツの128(成功78)だった。また犠打が少なく強攻策が目立った。そういう積極采配は攻め際を強くし、チームが数字以上の力を発揮することがある。チームを雰囲気に乗せて、シーズン途中から雪だるまを転がすように強さを増していく。そういう〝怒涛の流れ〟を意図的につくり出すというのは、むしろ今のプロ野球界では王道なのではないか。昨季の阪神もそのパターンだった。不動の1 、2番になった近本光司と中野拓夢コンビ、恐怖の8番打者・木浪聖也などが流れの中から育ち、先発投手として活躍した村上頌樹、大竹耕太郎もシーズン前はノーマークだった。これから誰にも予想できないドラマが展開していくと思う。新井監督には〝やんちゃでいい。思い切りメチャやってほしい〟。逆境(低評価)こそ、彼が望む形である。奇抜な采配でカープが強くなり、リーグ優勝のテープを切ることは十分にあり得る。
プロフィル
迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「森下に惚れる」「逆境の美学」