スーパーのフジ(愛媛)は3月、子会社のフジ・リテイリング(同)とマックスバリュ西日本(南区)を合併し、新会社を広島市に設立する。店舗開発、システム、物流などのノウハウやリソースを共有することで生産性を高め、中四国・兵庫でドミナントを加速する方針だ。新会社を率いる山口氏に抱負を聞いた。
ー統合後の目標は。「中四国・兵庫県の圧倒的なリージョナルリテーラー」を掲げている。店舗のあるエリアの多くの県でSMとしてトップシェアになり、商品も統一するため効率の良いサプライチェーンをつくれる。両社が別々に行う物流、プロセスセンターなども効率的に統合。シナジーを創出し、顧客支持を高める取り組みにつなげる。それをしっかり実行するための組織風土づくりが課題だ。ー出店戦略は。自社競合に当たるケースもあるだろうが、統廃合はあまり考えていない。出店については建築コストの高騰などもあり、慎重に進める。今春策定する次期中期経営計画で重点戦略に据えるのは既存店のリニューアル。ある程度意識的な投資で建て替えや改装を行っていく予定だ。ー具体的な効率化の取り組みは。両社とも近年プロセスセンターなどに積極的な設備投資を行っており、既存施設の活用を前提に、商流の統一やルートの見直しを進める中で一層の効率化を目指す。老朽化したものはリプレースを検討。一方、販促はそれぞれの地域ニーズに沿ってきめ細かに対応する。事業の成長を考えると、M&Aも視野に入れている。統合で一定のスケールメリットが出て、それを活用してもらえる面もある。積極的に門戸を開きたい。ー働き手の減少にどう挑むか。チェックアウトの省力化とプロセスセンターの活用の二つが柱。既に店舗にセルフ・フルセルフレジを導入しているが、ご案内にかかる人手も多く、人時の削減にはそこまでつながっていない。現金とバーコード決済といったキャッシュレスのバランスなど、改善できる点は多い。必ずしも人を減らそうという発想ではなく、レジに人手がかからなくなる分、接客や売り場づくりといった品質向上に時間を使い、選ばれる店づくりにつなげる。プロセスセンターの活用を推進し、店舗オペレーションを効率化する。総菜などは店内キッチンで揚げる、炒めるだけで店頭に出せるようキット化。より多くの品目で出来たてを提供できる体制を整えたい。冷凍技術がずいぶんと進歩しており、例えば冷凍の状態で店に刺身を運び、解凍して陳列するといったこともできると思う。ー顧客の属性と購買情報をひも付けて需要予測に生かしている。性別や居住地、年齢といった購入者の情報や、特売商品のPI値(来店客1000人当たりの購買指数)を蓄積する取り組みは20年ほど前から行っている。年々改良しており、今後の課題は各店で発注を担うパート従業員がこれらのデータをきちんと活用できる体制を整えることだ。情報システム部門がデータを加工して店舗にフィードバックするのではなく、実際に売り場をつくる職員がシステムを使って自分の仕事を効率的に、より効果が高いものへ変えられるようにする必要がある。商品部長だった20年ほど前、売り場の写真を各店が投稿し合う仕組みを導入し、現在も行っている。こうした小さな取り組みを重ねて従業員の意識や風土を変えていく。ー商品開発について。プライベートブランドはイオングループの「トップバリュ」商品を全店で扱う。これとは別に、地域メーカーとのタイアップや地域産品を使う商品の開発に力を入れる。23年7月には広島レモンのパンケーキを発売。地元のものがあると手を伸ばしてみようと思っていただけると思う。各地で地域に根差し愛されているメーカーがあり、そういった事業者と協業することで地域の良さを実感できる商品を届けたい。中四国は一次産業が盛んで、農水産物を地域内の全店で販売するといった取り組みも積極的に行いたい。統合で販売力が高まる。一定の生産量を確保することで生産効率が上がり、売価も抑えられる。地域の生産者、メーカー双方にメリットを提供できる。
プロフィル

やまぐち ひろし1959年3月30日生まれ、愛媛県出身。松山商科大(現松山大)経営学部を卒業し、81年フジに入社。改善推進部長、人事部長、総務部長、管理本部長、専務などを務め2018年社長就任。22年から現職。持ち株会社フジの副社長を兼任。