荒谷130周年
ドライアイス卸の荒谷(西区商工センター)が7月に創業130周年を迎える。あまりにも若く、社業の途上で3代目社長の夫を亡くし、専業主婦から急きょ4代目に就いた荒谷君江さんは、「あの日から今日まで45年の歳月は無我夢中でした。時に困難極める経営を乗り切り、今を迎えることができたのは社内外の方々に手を差し伸べていただいたおかげです」1894年に南区稲荷町で工業薬品の販売で創業。1971年に3代目社長と結婚して家事にいそしむ平穏な日々を送っていた。しかし7年後、夫は40歳の若さで急逝。後継者に名乗りを上げる社員は現れず、会社勤めの経験さえなかったが何としても会社を守ろうと決意を固め、先頭に立った。娘2人の子育てと両立しながら手探りの経営が続いた。目の前のことで毎日が精いっぱい。そうした矢先に実父が糖尿病を発症し、菊芋の主成分イヌリンが症状改善に期待できることに着眼。菊芋焼酎「一呑(ぴんどん)」の製販に乗り出した。今は焼酎7銘柄や健康食品の販売も手掛けるなど、挑戦の連続だったという。「リーマンショックで受注が減り、どうなるかと肝を冷やした。そんな窮地を救ってくれたのは、それまでに何となく始めていた賃貸マンション経営の収入が大きかった。さらに100万円以上のドライアイスクラッシャーを売却し、急場をしのいだ。今、安定した経営を維持できているのは、義父が初めて目にした物珍しさから扱うことになったドライアイスのおかげ。受注量の変動が緩やかで業績を支えてくれます。こうして130周年を祝えることができ、安堵しています」
金融教育の出前授業
金融トラブルに巻き込まれないよう、健全な人生設計を描く上でお金とどう向き合うのか、基本的な知識や判断力が求められる。金融財務研究所(中区東白島町)の本川吉弘社長は、企業向けに従業員の金融リテラシーを向上する「お金の授業」を設け、企業の要請に応じて出前講座を展開。2月はサンヨーフーズ(廿日市市)で2回行った。個人型の「iDeCo」や企業型の選択制確定拠出年金のほか保険の入り方、新NISAなどをテーマに話した。特に企業型は節税効果や社会保険料の削減効果といった実施企業のメリットを分かりやすく解説。受講者のうち投資信託の運用未経験者が8割以上を占め、諸外国に比べ金融知識の普及が立ち後れていることを痛感したという。本川社長は、「むろん投資の判断は個人次第。無防備にリスクの高い金融商品に手を出して生計を破綻させてはならない。金融の学びは誰にとっても有意義で、生活設計を描く大切なツールの一つです」企業型確定拠出年金を提案し現在、数人から千人規模の中小企業の社員3320人が加盟。株価上昇で新NISAにも追い風が吹いてきた。
ココロオドル
アミューズメント施設運営の東洋商事(中区河原町)は、社内視察ツアー(有料版)を開始した。経営指標も含めて自社の取り組みを余すことなく公開。視察に訪れた人を驚かせている。過去1年で30社以上100人近くを無料で受け入れたが今回は新商品としてサービス展開する。社員を巻き込み「変革」に挑む姿を伝え、人材育成にもつなげたいという。バックオフィスからパチンコ店、保育施設など4事業5拠点を回るツアーで参加費1人2万2000円。みんなのモチベーションが高く改善提案が日々出てくる。パチンコ店は顧客接点を重要視。来店客の声を吸い上げ、スピード対応で店舗売り上げが7%向上。保育事業、宿泊事業へ広げ、近年は採用支援も行う。 2012年に2代目を継いだ長谷川康垣社長(41)は、「業界の非常識に挑戦する経営ビジョンを打ち出し、理念に〝一人ひとりのココロオドル源であり続ける〟と掲げた。視察を通じてココロオドル組織の活性化に役立ちたい」
シニアの学び直し
日本人の平均寿命は84.3歳で世界一。セカンドライフを充実して過ごしてもらいたいと、コミュニティアカデミー(中区舟入南)は2月28日、65歳以上が学び直せる場「シニア塾」を開講した。大学の退官教授や専門家を講師に迎え、5回前後のゼミ形式で受講生が課題を深掘りし討論する。5月から東京の日暮里でも始める。上智大学名誉教授で広島在住の香川正弘代表は、「文化教室などは多くあるが、シニアが探求しながら視野を広げ、考えを深める場が不足している。社会のしがらみの中で凝り固まった頭を一度ほぐし、子どもの頃のように純真な気持ちで人生を楽しんでもらいたい」壮に学べば老いて衰えず、老いて学べば死して朽ちず。生涯学習の大切さを説く。
eスポで社会貢献
昨秋に創業し、eスポーツのイベント運営などを手掛けるプリメイドラボ(中区)は、誰でも時間制でeスポをプレーできる店舗を廿日市市大野の通信制高校と同じ建物に開いた。引きこもりの人をeスポで元気にし、プレーヤー同士の関係を築くことで再び社会に関わるきっかけにしてもらう。当初は広島市中区内で計画していたが適地が見つからずに困っていたところ、eスポに力を入れる同校から協力を持ち掛けられて決断。生徒の練習拠点を兼ねる形で開業した。大窪竹虎社長は、「引きこもりがちだった生徒がeスポをきっかけに登校を再開した例がある。社会課題の解決に一役買えればとスペースを提供。頭と体を同時に使うことで高齢者の認知症を防ぐ効果も期待できる」(社)日本eスポーツ連合は、2019年の市場規模60億円から25年には220億円へ成長すると予測。同社も大会などの企画運営を重ねながら業績を伸ばし、将来は広島市中心部への出店に再挑戦をもくろむ。
酢でリフレッシュ
アシードホールディングス(福山市)傘下で飲料製造のアシード(東京)は2月16日、働く20〜30代の女性をターゲットにした黒酢使用の飲料「スレッシュ」を発売した。2022年10月に開発マーケティングチームに配属された田中咲さん(26)は、翌月から広島県の新事業開発プログラム「ビジネスDASH部」に参加し、支援を受けた。仕事中にカフェインやカロリーを取らずに気分転換したいという自身の思いをめぐらし、同商品を企画。すっきりとした酸味の黒酢に、カシスとザクロのフルーティーな味わいを合わせて炭酸で飲みやすく仕上げた。試作品を飲んだ女性100人へのアンケートで、黒酢が苦手なのに飲みやすいという上々の結果。アミノ酸が豊富で美容や健康にも効果があるという。今どき、若い男性からも人気を集めそうだ。
ぬりえで無料に
ラーメン店「天下一品」西日本統括のベスト天下一品(西区)は3月18日〜4月18日、2歳〜小学生を対象にラーメン無料のフリーパスがもらえる「ぬりえ企画」を西日本エリア全店で開催する。フリーパスは特別賞で3カ月、社長賞は1年間使える。応募した全ての子どもに賞を贈る方針。同企画は今年で節目の20回目になる。末吉雅彦社長は、「経営理念に、子どもの成長を応援する企業集団と掲げている。各地に店舗を出し、多くの人々に支えられてきた恩に返礼できないかと考えたのが発端。ぬり絵で笑顔を広げてもらいたい」
動く発電機
ゼロカーボンシティを推進する廿日市市は3月6日、県内で初めてプラグインハイブリッド型の消防指揮車を導入し、廿日市と佐伯消防署へ配備する。 火災や災害現場などへ出動して活動隊を統制する車両で、7人乗りの三菱自動車アウトランダーPHEVに切り替える。「1500㍗の電力が確保できる、まさに動く発電機。投光器の使用や携帯無線、携帯電話などへの充電が半永久的に可能で、災害時は電源車として安全、確実な消防活動を支える」(消防本部)