昨季、最優秀中継ぎ投手のタイトルを取った島内颯太郎は投げた973球のうち、600球(62%)がストレート、363球(37%)がチェンジアップだった。残るわずか10球でカットボール6球、フォークボール2球、スライダー2球を投げただけだったのだ。つまり二つの球種(計99%)で、セ・リーグの打者たちを手玉に取ったのである。今季もそのままいけば…と思うが、そうはいかないと思う。なぜならプロ野球界において、同じ投手の同じ攻め方が2年連続で通用することはまれだからである。各球団とも徹底的に島内対策を打ってくる。島内はその対抗策として、当初ツーシームを習得すべく試投を始めていた。ツーシームといえば、カープでは球団アドバイザーの黒田博樹氏が渡米後に確立した球種として知られている。そもそも島内が覚醒したのが、その黒田アドバイザーの「自分の直球に自信を持て!」という言葉だったこともあり、島内は再びツーシームの投げ方について、黒田の指導を求めた。しかし黒田の助言は違っていた。「持ち球の球速帯を考えると、ツーシームよりカーブの方がいい」。昨季の島内のストレートの平均球速は約152㌔だった。そこに平均で10㌔ほど遅いチェンジアップで三振か凡打に打ち取る。この組み合わせの中では、ストレートに近い球速のツーシームよりも、ストレートとチェンジアップの中間くらいの速度で縦に曲がるカーブが有効になる。島内はその助言を信じて新球種に磨きをかける。オープン戦での試投も良好だ。今季の島内のカーブに期待している。
プロフィル
迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「森下に惚れる」「逆境の美学」