その他 2026.04.03

小林カズヒコの経営者のための実践マーケティング講座 第47回「危機にある今こそ編集工学に活路」

 この原稿を書いている時点(3月17日)で、イラン情勢の緊迫・長期化、それに伴うホルムズ海峡の封鎖の懸念により、日本経済はエネルギーコストの高騰など戦後最大級の脅威に向き合っています。多くの企業が「コスト増をどう価格転嫁するか」という守りの議論を展開中ですが、マーケティングの視点から見れば、これは単なる物流の危機でくくれない。慣れ親しんだ既存のビジネスモデルという「文脈」がまた一つ通用しなくなった、と解釈できるのです。

 数年前のコロナ禍において「人の移動の封鎖」が起きた時も同じでした。「客が来るのをひたすら待つ」と、これまで通りの文脈を維持した飲食店は苦境に立たされましたが、一方で事業を拡大して収益を上げた経営者もいた。そう、彼らは外部環境の激変にめげず、今が好機と、既存のリソースをまったく別モノへ短期間で「再編集」したのです。

 あえて「文脈」なる表現を使ったのには理由があります。2年前に亡くなった、松岡正剛氏が説いた「編集工学」というスキルが、そのまま企業の再編集に役立つからです。日本の情報ネットワークの先駆者である松岡氏は既存の資源「ヒト・モノ・カネ・情報」を新しい文脈でつなぎなおし、価値を再定義するための思考OSを「編集工学」と名付けました。この情報編集術を危機的状況下で事業展開に活用するのです。

 例えば「エネルギー高騰」が起こると次に「ムダの削減」となります。ほとんどの企業はここまでですが、編集工学の文脈で「今周囲にあるものを利用できないか」と別の視点を加えれば地産地消的な「あらたな循環型モデル」が生まれるかもしれない。あなたが「周囲にある資源=ヒト・モノ・カネ・情報」に目を向けるだけで、それが多岐にわたることにも気づき、新鮮な刺激を得るはずです。

 エネルギー高騰に伴いあらゆる供給が不安定になることを考えると、ただ売りっぱなしではなく、商品のライフサイクルが長くなるよう再編集し、「直して使う」「育てる」といった文脈を新規に掲げてはいかがでしょう。「不足」を逆手にとって「希少性の高いもの」と言い換えてもいい。アナログ部分をデジタル、特にAIで代替することで「つなぎ変える」も有望な検証ポイント。

 このように物理的、マインド的な制約を欠陥や障害と見ずに、新しい文脈を生み出すためのパラメーターと捉え直すのです。われわれに必要なのは危機が去るのを待つ忍耐ではなく、こういった現状を大胆に推敲し、望む未来に書き換えるポジティブな編集力です。

 私のクライアントの大半も助言当初はないないづくしでしたが、新たな設備投資などせずとも、手持ちのカードの組み替えと、そこから派生した付加価値の適切な言語化だけで、突破口が見つかり、収益アップを実現しています。編集工学は私も勉強中で奥が深く、この紙面では語り尽くせませんが、ぜひご自身の事業に役立てたい、詳細を知りたいと思われる方はご相談ください。

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小林 カズヒコ 
コピーライターやアートディレクターを経て、中四国初の本格的なマーケティングコンサルに転身。中小企業経営者や個人事業者へのコンサルほか、金融機関からの依頼で経営が悪化した企業への助言も実施。診断や相談先メール(匿名不可)marketingdefense@harukomania.com

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