リアルの力
いよいよ3月24日開業する広島新駅ビル「ミナモア」3階WESTに、廣文館(中区中町)が未来型書店「ブック ギャラリー コウブンカン」を出店する。〝毎日イベント〟をテーマに掲げ、広島を知って応援し、楽しんでもらう狙いだ。売り場132平方㍍の棚に約3万冊を並べる。約30平方㍍のギャラリー区画はポップアップ販売や広島の作家、アーティストらのイベント、発表の場に活用。人口減やネットの台頭で街から書店が消えていく中、丸岡弘二取締役COOは、「リアルな体験や経験を積み重ねて得られる新たな発見を実感してほしい。情報は今、さまざまな媒体から取れるが、本が傍らにある生活を願っている」西区のコーヒー豆専門店マウントコーヒーの豆と本を組んで販売するほか、広島経済大の学生とポップジャパンが生成AIを使って制作したブックカバーの展示販売なども企画し、書店空間に新しい価値を創っていく。ギフト・自分磨き・生活を楽しむ。それぞれの目的に応じてリアルに役立つ、必要とされ続ける書店を目指す。駅ビルを運営する竹中靖社長は、「オール広島で書店文化をここ、ミナモアから発信していきたい」
抹茶スイーツ世界へ
海外で「抹茶」がブームという。抹茶スイーツ専門店を展開する茶の環(西区商工センター)は、3月中に豪州東南部のニューサウスウェールズ州で計2店を開業する。昨年12月に海外1号店を同国へ出店しており、好調な滑り出しを見せる。新規2店はフランチャイズ形式で、茶葉のほか宇治抹茶を使ったソフトクリーム、ケーキ、焼き菓子などを販売。イートインコーナーも設ける。ロードスセントラル店(33平方㍍)は月1000万円、チッパンデール店(66平方㍍)は同2000万円の売り上げを目指す。大淵馨社長は、「先行のアデレード店は国内店舗に比べて約3倍の売れ行きです。健康志向を受け、海外でも栄養価の高い抹茶が人気になった。この機を捉え、抹茶スイーツの魅力を世界へ広めたい。シンガポール、マレーシアなど東南アジアへも出店し、10年後に50店舗を目指す」1955年に創業。現在は国内8、海外1の9店舗。国内外に追い風が吹いてきた。
こども仕事体験
県の転出超過はついに1万人を超え、4年連続で全国最多に。もっと地元の企業や団体に興味を持ってもらおうと損害保険ジャパン広島支店などでつくる実行委員会は2月16日、「こども仕事体験フェスタ」を県立広島産業会館で開いた。

小学生280人が集まり、県警や消防署にマツダ、広島銀行、フレスタなどの14企業・団体が参加。マツダの砂型鋳造職人見習い体験は、砂型を作って溶かした金属を流し込み、ミニカーキーホルダーを作成した。仕事の都度に給料として疑似通貨を受け取る。買い物のように文具や菓子などと交換できるコーナーも用意。同損保の穴山将広支店長は、「楽しそうな笑顔で体験する姿を見られて何よりでした。仕事の大変さを実感し、改めて親に感謝する気持ちにつながったようです。私も広島に貢献したいとの思いが一層強くなりました」
幸せに気付く
2011年3月に九州新幹線が全線開通し、山陽新幹線との相互直通運転を始めた。熊本県を素通りされるという不安が広がり、観光PRキャラクター〝くまモン〟が誕生。見失っていた地元の良さを再発見する〝くまもとサプライズ〟の企画がきっかけだった。瀬戸内海地域の経済活性化を目指す、せとうちDMO(真鍋精志会長)は3月3日、第15回せとうちミーティングを開催。くまモンの生みの親、小山薫堂さんが基調講演「幸せの企画術」で自身が手掛けた地域創生事業に触れ、瀬戸内エリアでも活用できるアイデア発案法を語った。「企画は新しいか、楽しいか、誰を幸せにするかという三つの自問が重要。幸せは日常の気付きから生まれる。東京から故郷の熊本に帰ったとき、歯磨きをしながら水道水のおいしさに気付いた。目の前にある幸せに気付いて瀬戸内の観光業に生かしてほしい」地域活性支援事業のオレンジ・アンド・パ―トナーズ(東京)を経営。放送作家として「料理の鉄人」など多数のテレビ番組を企画したほか、日米でアカデミー賞を受けた映画「おくりびと」の脚本を担当。プロデュースした尾道市千光寺山の宿「尾道倶楽部」が3月31日に開業する。
植木鉢が筆に
全国の小学生が授業で朝顔を育てる際に使うプラスチック製植木鉢の年間生産量は300トンに及ぶ。役目を終えるとほとんど廃棄される鉢を筆の軸にアップサイクルする取り組みが始まった。熊野筆製造の晃祐堂(熊野町)は、サーキュラーエコノミーを社会全体に浸透させる活動や環境教育の学習コンテンツ開発などのPHI(東京)と共創プログラムをスタート。安田小学校(中区白島北町)の使用済み植木鉢を回収し、筆の軸に加工した。3月3日、アップサイクルした書筆303本(3本セットを2年生101人分)を同校に贈呈。土屋武美社長は、

「教材ではコスト面から必ずしも熊野筆を使わないが、自分たちが使ったプラ植木鉢の筆であれば、より身近に感じ愛着が湧くのではないかと考えた。穂先は天然毛と人工毛の混合。SDGsを見える化し持続可能な社会の創り手を育成する取り組みとして、今回の実績を踏まえ各地でも展開していきたい」特産品を守り、地球環境を守る意識を高め、広げてほしい。化粧筆も出番を待つ。
迷惑行為ゼロへ
投資用賃貸マンション「月光」シリーズを展開するスカイクリエーション(中区鉄砲町)は、2月から入居者向けに違法駐車などの迷惑行為相談サービスを始めた。賃貸マンション業界では珍しい取り組みという。マンション敷地内での違法駐車やたむろ行為、違法風俗営業、ストーカーなどのトラブルはどうやって解決すればよいのか。同シリーズの賃貸管理を手掛けるケイアイコミュニティー(岡山)と連携し悩み相談に応じる。マンション共用部に掲示する2次元コードをスマホで読み取り、専用の問い合わせフォームに物件名や相談内容などを打ち込むと、速やかに対応する仕組み。供給済みの全80物件にいずれも防犯カメラ4台以上を設置しており、深刻な場合は弁護士や警察の協力も仰ぐ。スカイ社の蒲原陽平社長は、「ハラスメント行為には毅然と応じることが大切。被害に遭ってもんもんと悩んでいても解決の糸口は見つからない。相談サービスを通じて迷惑行為の撲滅を図り、入居者の住みよい環境づくりに役立つことができるよう全力を尽くします」
防災庫で地域貢献
地域貢献など社会的責任を果たす「CSR活動」に取り組む企業が増えてきた。一方で何をすれば良いか分からない、始めたものの長続きしない、といった悩みの種になることも少なくないという。(社)みんなの防災倉庫普及協会(中区橋本町)は自治会、幼稚園・保育園、福祉施設などに対し、簡易トイレや給水タンクといった備品入り小型倉庫の設置を提案。その費用を寄付として負担してくれるサポーター企業を募っている。代表理事の益本秀則さんは、「多くの人が目にする防災倉庫にはサポーター企業の名前や地域活動の標記が可能。CSR活動を広く知ってもらえるうえ、一過性で終わることもない。地域へ貢献したい企業と、万一に備えたい自治会や施設をマッチングしていけたら」認知向上へ、昨年12月には多くの県内企業とつながりを持つ広島綜合警備保障(安佐南区)と提携。同社がPR・販売のほか、倉庫の点検も担ってくれるというから心強い。東日本大地震からはや14年。被災地の岩手・大船渡では山火事が発生。企業、地域でできることは何か、改めて意識を向けたい。