2025年シーズンの新井カープは、二つの異なる課題に同時に取り組むことになる。それは「目の前の試合に勝つこと」と「近未来の常勝チームをつくること」である。一つ目の話に言及すると目の前の試合に勝つためには、どうしても新たに加わった外国人選手に頼らざるを得ないところがある。外国人打者の人選については、候補選手の全てをビデオチェックしたという新井監督が、その決断に携わった。おそらく彼の心の中には〝25年の救世主〟という目論見があったのではないかと思われる。日本野球への適合という観点から精査した結果、カープは米・大リーグで通算21本塁打を放ったモンテロ(ロッキーズ)と同マイナーで通算104本塁打を放ったファビアン(レンジャーズ傘下)を獲得した。2人とも春季キャンプやオープン戦などを見ている限り、力の抜けた〝日本野球に合った〟良い打ち方をしている。モンテロは左方向に力強い打球を放てるパワーヒッターで、ファビアンは三振が少なく右方向へも打てる中距離ヒッターである。いずれも既に実戦で好結果を出しており、打線で中軸を打つことが期待されている。もし希望的に書くならば、2人で24年シーズンのチーム52本塁打に相当する各26本くらいをかっ飛ばしてほしい。実は、新井カープの〝目の前の勝ちにこだわる戦い方〟というのは就任1年目と、2年目の8月頃まで実践できていた。私は、この点についてあまり心配していない。おそらくモンテロとファビアンの出来が、今季のカープのカギを握ると思う。
プロフィル
迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「森下に惚れる」「逆境の美学」