広島県信用保証協会は中小企業が金融機関から融資を受ける際に保証人となって金融の円滑化を図るのが主業務で、2024年3月時点で県内中小企業の3分の1以上の3万4087業者が利用する。24年6月に会長に就任した、寄谷純治会長に運営方針、中期計画、ゼロゼロ融資の返済状況、伴走支援型特別保証、新しい取り組みなどを聞いた。
―就任の抱負と運営方針は。広島県庁やひろしま産業振興機構で中小企業支援業務を行ってきた経験とネットワークを生かし、信用保証業務に取り組みたい。経済は回復基調と言われていますが、物価高、原材料高、人件費の高騰などで中小・零細企業の経営環境は厳しく、信用保証を通じた資金繰り支援のほか、金融機関や産業支援機関と連携した経営支援が重要になっています。広島県中小企業活性化協議会、ひろしま産業振興機構内の県よろず支援拠点、県事業承継・引継ぎ支援センター、商工会議所などの支援機関と密にコミュニケーションを取れる仕組みづくりを考えたい。

―保証承諾などの実績と中期計画は。23年度は保証承諾額が2759億6100万円と前年比53・8%増、計画比でも38%増と大幅に増えました。新型コロナ対応のゼロゼロ融資の返済が本格化する中、「伴走支援型特別保証」を利用した新たな資金調達や借換が増え、特に広島県独自の上乗せ制度が24年3月末で終了したこともあり駆け込み需要が出ました。24〜26年度はゼロゼロ融資返済が本格化する前の22年度実績(1749億6500万円)をベースに1割程度増加した金額で横ばいに推移する計画です=表1参照=。24年度はこれまで計画より1割少ないですが、想定内で推移しています。保証債務残高はゼロゼロ融資返済の第一波が23年春、第二波が24年春に来るなど返済が進み、今後も償還額が保証承諾額を上回ることに加え、代位弁済の高止まりが予想され中期計画は減少を想定。代位弁済額は中小企業の経営環境の厳しい状況が続くとみられ、23年度より若干増額した金額の横ばい推移を見込んでいますが、24年度は12月に大口があったこともあり、12月末現在で前年比15%強、計画比3〜4%増になっています。


―ゼロゼロ融資の状況と対応は。ゼロゼロ融資は20年5月1日から申込受付を始め、20年度は3万7300件、総額5709億3000万円、21年度は5月末まで1130件、総額194億500万円の保証承諾を行いました=表2=。ゼロゼロ融資の保証債務残高は、返済や代位弁済で、21年度の3万5669件・総額4925億円から、22年度は3万4520件・4370億円、23年度は2万3524件、2555億円と減少。24年度は12月末現在で2万1468件、2030億円となっています。―伴走支援型特別保証などの状況は。伴走支援型特別保証は21年4月から始まり、国の制度として24年6月末まで実施。信用保証料補助を国に加えて上乗せで保証する広島県の制度が24年3月で終了し駆け込み需要もあり、23年度は6277件、総額1720億円と増加。24年11月末の保証債務残高は7912件、総額1961億円になっています=表3=。24年7月開始の全国統一の保証制度「経営力強化保証」(2億8000万円以内、保証割合80%)は、金融機関、認定経営革新等支援機関の支援を受けつつ、自ら事業計画の策定・実行・進ちょくの報告を行う中小企業等が対象で、ゼロゼロ融資などコロナ関連融資からの借り換え需要にも対応しています。コロナ関連以外の借り換えも可能で、一部を除き最大0・2%の信用保証料を低減。11月末の保証承諾実績は60件、総額19億2300万円です。―バンクミーティングの状況は。コロナ禍の20年度は50件、21年度100件、22年度170件規模だったバンクミーティングは23年度、約300回参加。24年度も11月末現在で200回以上出席し、業績回復が遅れている中小企業の支援策を協議しています。バンクミーティングは中小企業活性化協議会が中心になり、融資する金融機関や当該企業で行われることが多く、支払い延期、支払額減額などの条件変更のほか、売上高減少の場合は、個別企業ごとに商品の集約、新しい販路開拓、販売管理費・経費の削減、不採算事業所の閉鎖などの話し合いを行っています。


―最近の組織変更はどうですか。増加する条件変更の業務を集中的に行うため23年に、経営支援部で対応していた業務を保証部に移管し、新たに3人体制で保証調整課を新設。24年度も4〜12月末で条件変更事業者数は前年同期比5・6%増の2991社、件数は6%増の8860件と増加傾向が続いています。今後は経営支援の体制強化、事務業務のDX化を行う計画で、それに伴う組織変更も検討しています。―創業関連の保証商品の状況は。23年3月開始のスタートアップ創業促進保証(=SSS保証、創業予定者・法人設立後5年未満など、上限3500万円、物的担保徴求なし)の保証承諾実績は、23年度に48件、総額2億8400万円、24年度は11月末現在で27件1億3000万円です。創業関連保証の信用保証料に0・2%上乗せし、経営者保証が不要になる全国統一の保証制度で、24年7月末現在で全国では2291件、総額230億9800万円の実績があり、中国地方では広島が最多。会社設立原則3年目、5年目に中小企業活性化協議会によるガバナンス体制整備のチェックがあります。24年度は11月末現在で創業関連保証全体で626件、26億7300万円=表4=。前年同月比で件数、額とも2割増になっています。―主力の保証商品はどうですか。主力のステップ保証(2000万円または5000万円以内、保証割合80%、10年以内、担保原則不要)は23年度、伴走支援型特別保証の利用増の影響もあり、件数、総額とも減少しましたが、今年度は増加し回復傾向で、11月末現在で金額が前年1年分に並びました=表5=。―新しい取り組みはどうですか。経営力強化保証に加え、全国統一の「事業者選択型経営者保証非提供制度」に取り組んでいます。24年3月から、「経営者保証に関するガイドライン」の要件をすべて充たしていない場合でも、保証料上乗せで事業者が経営者保証不要を選択できるようになりました。国が保証料の一部を補助する特別保証も創設されたほか、SSS保証、事業承継特別保証など経営者保証を不要とする保証制度もあり、今後も「保証協会=経営者保証が必須」ではないことを周知していきたい。―その他トッピクスは。23年度に、入って5年目以内の初任者を対象に、実務経験を通じて必要な知識やスキルを段階的に学ぶことができるよう「若手職員のキャリアプログラム」を策定。主要業務の「保証審査」、「管理回収」の基本的業務知識を細分化し、OJT教育を基本に①知識教育、②実践指導、③面談(習得状況の確認)、④実践の4ステップで学んでいます。23年度は保証審査13人、管理回収4人、24年度は保証審査5人、管理回収2人に実施しました。昨年11月から、気候変動への適応と、職員の多様性・自立性を尊重した働きやすい職場環境の実現を進めるため、ビジネスカジュアルを全役職員対象に導入。品位を保ちながらノーネクタイで仕事しやすい服装に移行しています。
担当記者:大谷