広大生が長期就業
短期間の就業体験プログラム「インターンシップ」に対し、大学と企業が共同して学生を長期間派遣する「コーオプ教育」は実践的な経験を重ね、キャリア形成などに役立つという。広島大学は本年度から国立大で初めてコーオプ教育を導入。上々のスタートとなったようだ。情報科学部3年生の7人がマツダ、広島銀行、中国電力、マイクロンメモリジャパンなど6社で約4カ月間、報酬をもらいながら勤務。その成果報告会が2月13日にあった。学生らは専攻を生かし、社内DXのためのシステム構築や生成AI活用を促す役割などを担った。クラウドサービス開発のドリーム・アーツ(中区大手町)に派遣された学生は、「自分にも裁量のある仕事を任せてもらえ、成長につながったと感じています。試験の結果が点数で表れる大学とは違い、担当の社員から具体的なフィードバックがもらえ、とても貴重な学びの場となりました」受け入れ側の復建調査設計(東区光町)の担当者は、「(学生は)基礎的なデジタル技術を理解しており優秀でした。若い感性を生かした斬新な提案も受け、大いに助かった。ビジネスや社会課題に対する実践的な理解をさらに深めてもらう契機となればうれしい」7人は4年生後期にも同じ会社で再度働くことにしている。広島大は来年度、さらに受け入れ企業を増やしていきたいと話す。優秀な人材を求める企業と就活生にとって、より確かなマッチングの場にもなりそうだ。
フルーツに続きがある
食べられるのに廃棄される「食品ロス」は国内で年間約472万㌧(農林水産省)。全国民が毎日、おにぎり1個分を捨てる量に近いという。食品ロスは事業系と家庭系がほぼ等分。これを見過ごすことはできないと立ち上がった。ジャムなどを製造するアヲハタ(竹原市)は、発酵原料の研究開発型スタートアップのファーメンステーション(東京)と連携し、食品残さを原料にしたエタノールの発酵、精製に成功。除菌、消臭効果があるエタノール配合のウェットティッシュを共同開発した。フルーツには続きがある。企業メッセージの通り、1932年の創業以来、みかん缶詰の製造工程で出る外皮や残った実、内皮まで食品原材料とするなど無駄のない生産サイクルを確立してきた。昨年5月には食品残さを養豚飼料に活用する取り組みを本格化。今回の日用品へのアップサイクルは初という。「社内公募で生まれたアイデアが起点。食品残さを発生させない、有効活用するという基本方針に徹して食品ロス削減に取り組んでいきます」(広報担当)ウェットティッシュは工場見学者に配布し循環の輪を広げる。
睡眠で業績アップ
燃料販売や木材加工の山崎本社(廿日市市)が睡眠の改善指導を通じ、企業の業績アップを後押しする新事業に乗り出した。すでに社内では1年前から約20分程度のパワーナップ(昼寝)を社員に推奨している。疲れが取れ、集中力・注意力が向上するとされ、グーグルやアップルなど世界的な企業も社員に推奨。山崎本社では精神的な余裕が生まれただけでなく次第に笑顔も増え、職場の活力アップに弾みがついたという。コロナ前と比べて約1・3倍の経常利益を確保できたことも心強い。林秀樹社長は、「日本人の睡眠不足による経済損失額は年間15兆円に上るという試算もあり、先進国の中でワースト。昼間に取る短時間の睡眠が疲労回復の効果をもたらすという米国社会心理学者の研究もある。人を大切にする健康経営として日本企業にもパワーナップが広まるよう、その重要性を訴えていきたい」
スポーツの力
広島が誇るスポーツ資源をフル活用し、みんなを笑顔にする。そんな目的を掲げ、2020年4月発足した「スポーツアクティベーションひろしま」(SAH、事務局=県スポーツ推進課)は2月1日、秦アンディ英之さんを代表に起用した。Jリーグ特任理事やプロバスケチームのGMなどを務めた豊富な経験を生かし、スポーツ情報を戦略的に発信していくリーダーの力量に期待した。SAHはイベント誘致や地域の活動支援に加え、競技の枠を超えた応援プロジェクト「チームウィッシュ」に取り組んでいる。さまざまな地元チームに興味を持ってもらえるよう、マツダラグビー部とイズミハンドボール部エースの得点対決予想ゲームなどを企画。専用サイト掲載のインタビュー記事は172本に上る。秦代表は、「スポーツには世代や国籍を問わず心を一つにする力がある。もっとわくわくして笑顔あふれる街を目指し、全力を尽くす」2月19日には9チーム16人のスタッフらを対象に合同研修会を実施。マーケティングやブランディング戦略などを学んだ。
井上印房50周年
会社印やゴム印、名刺のほか個人の実印などを制作する井上印房(中区昭和町)が2月11日、創業50周年を迎えた。28歳で創業した井上俊博社長(78)は島根県出身だが、1973年に達川光男さんらを擁する広島商業高野球部が甲子園で躍動する姿を見てファンになったという。1899年に創部以来、春夏通算7度の優勝を誇る古豪だが、このところ優勝から遠ざかる。「今も野球部にボールなどの寄付を続けている。卒業生が会社を起こした際には角印・丸印・ゴム印の3点セットを依頼されることも多い。94年に元宇品でプリンスホテルが開業した時は30回ほど飛び込み営業をかけ、注文をもらったのが懐かしい。50年間にはリーマンショックや、デジタル化による〝脱ハンコ〟など逆風もあったが、最近は若い世代が結婚や車の購入を機に実印を作りに来てくれる。何でもネットで買える時代だからこそ、顔の見える商いに安心感があるのかも」話好きで話題も豊富だ。異業種交流サロン「サクラ倶楽部」の会長も務める。いつも周りに笑顔が咲く。
伝統野菜の魅力
昨年、第14回広島本大賞のノンフィクション部門を受賞した「土と人と種をつなぐ広島」の著者・花井綾美さんを講師に招き、地元の伝統野菜の魅力や生産者の話を聞く企画が始まる。市文化財団東野公民館などが「広島おたから野菜リレートーク」を開く。2月28日午前10時に開く「祇園パセリ」(祇園西公民館)に続き、3月1日に笹木三月子大根(安公民館、満員)、8日に「なかすじ春菊」(東野公民館)、9日午後1時半から「小河原おくら」(高陽公民館)をテーマに講演・トークを行う。東野公民館は、「受賞作は気候変動や後継者不足などの課題がある中、生産者の声をもっと知らせていく必要があると伝えており、ご当地野菜の魅力と生産者の思いを紹介するイベントを企画。春菊の試食会や販売も予定している。伝統野菜に親しむ機会になってほしい」
未来を見つめる
青空に銘柄が映える煙突。総勢約300人が被写体として赤瓦屋根に囲まれ、田植えから始まる酒造り工程と戦時中の被爆者救護が一つの画面で繰り広げられる。美術家、宇佐美雅浩氏の制作プロジェクトの完成作で、不思議な空間へ誘われる。東広島市立美術館が企画した市制施行50周年記念展の第4弾で、最後となる「Recollection⇅Vision東広島の過去・現在・未来」は、約40点の作品を通じて東広島の風土と文化、歴史に向き合える。市民インタビューを交えた制作過程も映像で紹介。“8時15分〟をテーマに生きる時間を意識させた作品も印象深い。学芸員の大山真季さんは、「記憶を一つの作品として形に残すことで、戦後80年への思いを重ねながら、過去に思いをはせる。今をどう生き、未来に向かって進んでいくのか。自分自身に問い掛けてみることも大切」3月23日まで。15日は撮影した西条酒蔵通りを巡った後、鑑賞。定員20人。事前の申し込み要。