社内ヒエラルキーを破壊せよ
忖度という名の病
呉市のある経友会総会で講演しました。聴衆は地元のベテラン経営者約40人。マーケティングの専門的なスキルよりも即実行できる内容がよいと判断し、会社のトップが真っ先に取り組むべき1点に絞り、ユーモアを交えながらレクチャーさせていただきました。
その1点とは、会社の体勢の改革。具体的には「社内ヒエラルキーの解体」です。この連載の第6回「サイロ化した縦割り構造の企業に未来はない」でも少し触れたのですが、社内の垣根を越えた誰もがものを言いやすい環境づくりが、ますます重要になっています。読者から、その具体的な方法へのリクエストも頂いているので、併せて紹介します。
中規模の会社を例にすると、通常は社長をトップに、専務、常務、取締役、部長、課長、係長、一般社員というヒエラルキーで成り立っています。業務効率化を図るべく構築されたものですが、細分化が進みすぎて小回りが利かない上、守備範囲内のことしかできなくなり、時代に全く適合しない仕組みです。
例えば、客の反応を一番ダイレクトに見聞きしているのは下部に位置する営業や店員、電話受付担当ですが、支持にせよクレームにせよ、最前線での鮮度の高い重要な情報が、そのまま経営者に上げられることはまずありません。それは各部署を通過する際、必ずと言っていいほど「つまらぬ忖度」が働くから。
下の者は「部長はこういう話を嫌がるんだよな」、部長は部長で「喫緊の課題とは思うが、私の頭がまとまらないのでもう少し時期を見る」となるのです。これは障害を回避したい心理に起因し、ほぼ9割の企業に見られます。しかし、上司がイヤな顔をしようが、部長が理解できなかろうが、世の中はおかまいなし。結果、企業は機を逃し続け、ある日突然に表舞台からの退場を余儀なくされるでしょう。
「明日からできる2つの方法」
百害あって一利なしのつまらぬ忖度をどうすれば排除できるか。1つは定期的に全体会合を行い、ヒエラルキーをまたいで経営者に直接提案ができるようにすることです。ただし、これには弱点があり、「そうはいっても上司の前では」と尻込みする社員もいます。そこで2つ目。急成長を遂げているIT企業でも一部採用していますが、一般社員が直談判できるよう社長室を解放するのです。随時は難しくても、「今週はこの部署」と週ごとの持ち回りでも良いですし、メールによる先着受付の方法も簡単に導入できるはずです。
当然、社内のモチベーションも上がります。「優秀な者はいないので、どうせやっても意味がない」と感じたら、余計にお勧めします。思ってもみなかった社員からの、斬新な視点やアイデアに驚かれることでしょう。言うまでもなく、戦国時代の名将たちも、最前線のリアルな情報こそ、一番重視していたのです。
PROFILE
小林 カズヒコ
コピーライターやアートディレクターを経て、中四国初の本格的なマーケティングコンサルに転身。中小企業経営者や個人事業者へのコンサルほか、金融機関からの依頼で経営が悪化した企業への助言も実施。診断や相談先メール(匿名不可)marketingdefense@harukomania.com