インターネットは何をもたらしたのか
インターネットの普及以前は、個人が多くの人に何かを伝えるということは難しかった。それがネットで可能になったのです。その本質は、多くの人や企業が一つのネットワークでつながり、フラットな関係を持つことです。
①個人がメディアになる
1999年に大手電機メーカーとユーザーとの間に起きたクレーム対応の問題が、これを教えてくれました。ユーザーがメーカーのお客様相談室の対応を録音し、音声を公開したことで大きな注目を集めました。以前であれば、このような一消費者の発言は、一般に知られる事はありませんでした。これにより、巨大企業と一消費者の発言が、ネット上では等価ということを証明しました。
②トランプ氏のツィッター
次に、本質について考えたのはトランプ前大統領のツィッターです。アメリカ大統領は地上最高の権力者と言われ、オフィシャルな手段を多く持っています。しかし、トランプ氏が選んだのは、個人のツィッターでした。個人アカウントから政策の発表や閣僚の罷免などを行いました。地上最高の権力者が、一般人と同じツィッターで情報を発信したのです。支持者や、関心を持つ人の注目を集めてフォロワーは8877万人に達し、大きな影響力を持ちました。こうした事例から、ソーシャルメディアの関心の結び付きの強さで、情報が増幅されることが明らかになりました。
③ソーシャルメディアによるつながりの変化
スマホが普及してソーシャルメディアが主要なメディアになると、インターネットはより身近に、常に使われるようになりました。ソーシャルメディアが現実の人間関係だけでなく、主義や主張、関心、趣味などあらゆるものを結びつけた新しい関係性をネット上に実現したのです。
99年のクレーマー問題では、話題を中心に人が集まりましたが、ソーシャルメディア時代では関心や人間関係によって結びついた「増幅装置」が話題をさらに拡散させます。元々、ネットの持つ「シェア」機能が一層強化されたのです。
④拡散と炎上、ステマ
近年、「フェイクニュース」と呼ばれる不確かな情報や誹謗中傷が溢れるようになりました。企業もステルスマーケティング(ステマ)という消費者に気づかれないような広告活動を行うことがあります。ネットの増幅機能によりマーケティングのキャンペーンを拡散させる効果がある一方、ネガティブな情報が拡散して「炎上」することもあります。
インターネットは企業や個人だけではなく、既存のメディアも飲み込んで―つの大きな、フラットなメディアを構成しています。こうした世界をマーケティングの観点から見ると、メリットとデメリットが同居している状態です。
ネットの普及で企業も個人も効果的な情報発信が可能になりました。ただし、誠実でなければならないのは現実の世界と同じなのです。
PROFILE
宮田 庄悟(みやた しょうご) 1956年1月3日生まれ、和歌山県和歌山市出身。早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業し、79年4月に電通入社。本社マーケティング局、雑誌局、営業局などで広報、ダイレクトマーケティング、スポーツなど幅広い分野を経験。2014~19年、「ラグビーワールドカップ2019組織委員会」で広報、マーケティングなどを担当。20年4月から現職。