スプラウト(発芽野菜)生産で全国トップの村上農園(佐伯区)は1月、北海道伊達市南稀府町に生産センターを完成した。栽培試験を経て今春以降に出荷予定。生産拠点は13カ所となり、南は関連会社のある沖縄まで各地方のほぼ全てで供給体制を構築。最大年産200億円規模に。一般の需要伸長に応えるとともに業務用を拡充し、2025年12月期売上高は2期連続最高の125億円を目指す。
2万9000平方㍍の借地に、1期工事で8700平方㍍の太陽光型植物工場を建てた。ブロッコリーのスプラウト、エンドウ若菜の豆苗、カイワレ大根などを生産。道内への供給リードタイムを短縮する。年間5億円ほどの出荷額を見込み、10年内に倍増させる方針。同規模の2期工事も計画。一般に積雪の激しい北海道で冬の農業は極めて困難だが、植物工場による温度管理の徹底や融雪用の温水パイプなどの設備で安定生産を図る。ブロッコリーのスプラウト商品はスルフォラファン(がん予防や抗酸化、解毒力が期待できる成分)を豊富に含み、高齢・長寿命化社会で支持が広がっている。また、感染防御や免疫応答などに重要な機能を果たすとされる超硫黄分子も大量に含まれると明らかになり、メディアの紹介やSNSトレンド入りを受けて一時はスーパーで売り切れ状態に。健康情報番組や雑誌の特集内容がコロナ関連主体から、がん予防や抗酸化などと幅広くなり、追い風が吹く。習慣的に食べる消費者を増やし、売り上げは全体の5割を超えた。外食産業の回復や天候不順で野菜の相場が上がる中、植物工場で安定生産する同社商品の価格優位性が相対的に向上。豆苗なども好調で、24年12月期売上高は前年比25%増の113億7600万円を計上した。村上清貴社長は「各種のコストが上昇し続けるが、値上げをほぼせずに生産効率化で対応してきた。生命を守る農ビジネスの実現へ、高成分野菜を毎日食べてもらう〝定着〟が最優先。コロナ禍で足踏みした業務用市場にも力を入れていく。同業者は個人の農家が多く、当社ならではのスケールメリットで外食チェーンの全国展開に対応したい」と話す。例えば丼やラーメンにのせる具材の定番化を狙う。調理の手間を減らすため、豆苗を事前にカット加工する機械の導入などを進めている。風味や色、形が多彩でホテルやレストランを対象としたマイクロハーブは、18年の開始から4億円に伸びた。
担当記者:吉田