飲食店の効果的な生き残り戦術
新型コロナで危機的状況に陥る飲食業の突破口を実践マーケティングの視点から探ります。よく目にするテークアウトですが、すでに供給過剰にあり、思うような収益は得られていないでしょう。なぜならそれ以前の仕込みをクリアしていないからです。
まず落ち着いてやるべきは、以前の連載でも伝えた「既存顧客のセグメント化」です。新規の顧客獲得を目指すのは体力の落ちた状態では自滅行為なので避けてください。目を向ける先は既存客。これまでの利用客のリストを再分析し、利用頻度、1回に使う料金、注文内容などの傾向からA、B、Cの3パターン程度に分類します。それぞれの属性に対し、どのようなお弁当であれば買ってくれそうかを考え、カスタマイズしたメニューと料金を設定するのです。営業再開時に使えるサービス券などの特典もプラスしてください。
次に3つの属性を使い分けて、メルマガやラインで「**さん、あなたに喜んでいただける特典付きお弁当を作りました。特徴は〜」というようにダイレクトで商品画像付きのメッセージを送ります。手書きのチラシでもオッケーです。多くの飲食店が提供する金額も内容も一律のお弁当では、消費者は同程度の他店のお弁当との比較を始め、結局は値引き合戦の負のルーティンに巻き込まれてしまう。また、セグメント化の手間を省いて一方的に3種類の料金設定をしても労力が無駄になるだけ。リストから絞り込んだターゲットへ向け、そこが喜ぶであろうオファーを発信する。内容にオリジナリティやフィット感があれば応援の気持ちも刺激され、顧客の支持を得られやすくなります。
素材にこだわる店なら、素材そのものをデリバリーする方法もありです。伊の某ヘルシーレストランは以前の売り上げを大きく上回ったそうです。顧客宅への出張料理サービスの例も出てきています。この場合も安さ勝負はせず、しっかり内容にこだわり、それにふさわしい金額設定を心がけないと利益は得られません。また、休業要請や外出自粛の大幅な緩和時を想定し、コロナ感染予防対策を施した新しい営業形態にも今から着手しておくべき。客同士の密を防ぐ仕切り、客が触れる箇所のこまめな消毒、店員のフェイスガードや手袋の標準装備などです。目安として「そこまでやるか」と思える圧倒的レベルを目指しましょう。
昔、江戸は何度も大火に見舞われ、名だたる豪商たちは常日頃から、水に濡れても墨がにじみにくい和紙を使用した顧客台帳を用意。いざ火事になるとそれを井戸に投げ込み、後で引き上げ、何事もなかったかのように商売を再開したそうです。彼らは顧客リストさえあれば店舗を失っても短期間で事業を復興できることを知っていたのです。
顧客リストがない方は、客の名刺や連絡先を手掛かりに今からでも作ってください。このリストを使ったセグメント化はマーケティングのファーストステップであり、コロナ終息後も威力を発揮し続けます。そのうち、店舗や商品ありきではなく顧客の管理こそが重要であることも理解できるようになります。
PROFILE
小林 カズヒコ
コピーライターやアートディレクターを経て、中四国初の本格的なマーケティングコンサルに転身。中小企業経営者や個人事業者へのコンサルほか、金融機関からの依頼で経営が悪化した企業への助言も実施。診断や相談先メール(匿名不可)marketingdefense@harukomania.com