ニッチよりアンチを狙え
親しい経営者から「ニッチ層を狙っているけれどうまくいかない」という相談が寄せられました。いわゆるレッドオーシャン業界に身を置く彼は、ドラッカーの本を読んで感銘を受け、ニッチ戦略を自分の新規事業展開に組み込めないか試行錯誤を繰り返してきましたが、そもそも「ニッチ=すきま」を見つけ出すことが簡単ではなかった、と。ようやく見つけても市場規模があまりにも小さすぎ、採算が合わずに断念する、というルーティンを何年も繰り返してきたそう。陽気な彼は「ニッチもさっちもいかなくなった」と自虐ギャグで締めくくりました。
ドラッカーのニッチ戦略は「大手が見向きもしない、あるいは挑戦しようと考えるものさえない、限定的な市場を開拓し、無競争の環境下で着実に利益を上げる」と要約できます。ただ、この条件がそろうのは稀。市場の潜在的需要の調査に時間もかかるうえ、ギャンブル的な側面もはらんでおり、成功確率はかなり低いのが現実。
では、諦めるしかないのか。いいえ。実践マーケティング思考でなら、簡単かつ確実に有望なニッチ層を絞り込めるのです。
目を向けるべきは「アンチ」。ファンがいれば必ず、それを嫌う一定量のアンチが存在する。これは自然の摂理。さらにアンチたちの主張は、ファンの真逆を考えればいいので実に明確です。
たとえばあなたが焼肉レストランを経営しているとします。あなたのお店に来るのは当然ながら焼肉のファンで、その半数近くは家族連れでしょう。では、家族連れは例外なく焼肉店へ足を運ぶかといえばそんなことはない。家族の誰かに焼肉が嫌いな人がいて、みんなでそろって行くことができない、というグループが少なからず存在するのです。そこで、焼肉が嫌いな人でも喜んで店に来ていただけるよう「焼肉を使わないおいしいメニュー」を用意すれば、これまで来店できなかったグループを取り込める可能性が出てくる。もちろんこの場合も、マーケティングの原理原則「必ず小さくテストする」に沿って、「焼肉を使わないメニュー」を一定期間モニターテストして反応を測定することで、リスクは大幅に軽減できます。
繰り返しますが、アンチの主張は単純明確。それがそのままニッチのニーズなのです。
このアンチ対応は目新しいことではなく、たとえばアルコール飲料メーカーも、アルコールが飲めない人に、わざわざ「ノンアルコール」と銘打ったラインアップを開発し、したたかに収益を伸ばしています。最近はノンアルコール専門バーも登場しましたね。あなたも今そこにいるアンチを狙うべき。
私が新規クライアントにコンサルティングを実施する前に、必ず苦情受付担当者にヒアリングするのも同じ理由。クレームの中にこそ、ビジネスチャンスが眠っているのです。
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PROFILE
小林 カズヒコ
コピーライターやアートディレクターを経て、中四国初の本格的なマーケティングコンサルに転身。中小企業経営者や個人事業者へのコンサルほか、金融機関からの依頼で経営が悪化した企業への助言も実施。診断や相談先メール(匿名不可)marketingdefense@harukomania.com