今季のカープはベテラン・中堅と若手の融合が課題の一つになると思う。その中で野手のリーダー役を担うのが、14年目を迎える菊池涼介であろう。彼は昨季、これまで経験したことのない悔しさを味わった。そして気が付けば、同期の野村祐輔は引退、田中広輔は2軍スタートで、レギュラー格は菊池一人になった。昨季の悔しさについて、彼はこう語る。「9月は空回りというか、みんなの歯車がかみ合わなくなっていた。野球は9人でやる団体スポーツだから、一人でなんとかなるものではない」。そしてこう続ける。「何がダメだったのか。それぞれ個人が考えるシーズンになると思う。そこを経験できたことは得難い収穫だった」。昨季までの13年間で、菊池はさまざまな記録を達成した。通算350犠打に到達したことについては「サインに対して忠実にやってきただけ」。12年連続で100安打以上を達成したことについても「もう少し打たないといけないと思う中で、結果が出ないことの方が多かった」。打撃に対しては、あくまで謙虚である。一方で名物の守備については、隣で守る愛弟子の矢野雅哉の成長に目を細める。昨季、矢野がゴールデングラブ賞を獲得したことについて「それは、めちゃうれしかったですよ」。その菊池は3月で35歳になる。いつまでもリーダーというわけにもいかない。昨季は全143試合のうち7試合で欠場した。今季もインターバル(休み)が必要になるだろう。それでも野手をまとめる菊池の役割は、どのシーズンよりも大きくなる。菊池がそのことを自覚しているのは心強い。
プロフィル
迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「森下に惚れる」「逆境の美学」