広島第3の目的地
訪日客が10日滞在すると東京、大阪、京都に3泊ずつ。広島は大阪から日帰り観光。自ら広島泊の仕掛けをつくり、呼び込みを図るところが出てきた。昨年12月にユネスコ本部から世界で最も美しいと賞された下瀬美術館などがあるSimose Art Garden Villa(大竹市)が4月で開業2周年。今年から岡山のDMCを通じてティーズカンパニー(佐伯区)が手掛けるクルーズ事業と連携し、新たな仕掛けを設けた。オーバーツーリズムの混雑を避けたい海外富裕層向けに近隣の港から宮島まで送迎するプライベートボートを案内し、広島観光の拠点として同施設への宿泊を促す。運営母体のShimose A&R(西区)広報・営業部長の目黒真一さんは、「厳島神社と原爆ドームだけなら関西圏から日帰りでも回れる。しかし当美術館や近隣施設を巡り、2泊以上泊まってもらえれば消費を呼び込むことができる。世界遺産に次ぐ第3の目的地に選ばれるよう工夫を重ねたい」
カッパの出番
看板商品のふりかけ「ゆかり」を調味料に位置付け、生鮮三品の売り上げに一役買っている三島食品(中区)は今年の新戦力としてカッパを投入し、展示会などで大活躍しているという。

ゆかりを〝脇役〟にする「メイン食材販売支援プログラム」を昨年から本格展開。量販店をはじめ取引先の食材販促に効果を発揮しており、併せて調味料に使うふりかけ需要も生み出した。紫色を基調とする一連の販促物を次々に創作。手作りした人形に加え、満を持してカッパをデビュー。広報担当の佐伯俊彦さんは、「各店舗でキュウリをはじめ長芋、タコなどが平均3〜10倍の売れ行きを見せているという報告に驚いている。量販店データでも、ゆかりとのシナジーが実証された。カッパはキュウリが大好きです。脇役戦略の成果を一段と高めるMVPの活躍を期待しています」現在、流通大手など20社以上が導入し、総菜売り場にも展開へ。ゆかりの売れ行きに乗って姉妹品も好調だ。ひろし、鮭ひろしに次ぎ1月27日、カツオや昆布のうま味の利いた広島菜の混ぜご飯の素「だし ひろし」を発売。「かつお」に「しげき」とネーミングも相まってSNSで拡散し売れ行きに直結する新現象をもたらした。
食の魅力結集
付加価値を創意工夫し、食のプロをうならせる商材を一堂に集めた。中村角(西区草津港)グループの「春夏食品総合展示会」が1月29、30日、西区商工センターの市中小企業会館であった。食材の供給不足などで食品価格が高騰し飲食店や家計を直撃。関連企業がしのぎを削る中、同社は地域の特色、力と連携した商品開発に心血を注ぐ。営業企画部の木原啓子さんは、「今回の特設展示はコクやうま味に加え、調理時間短縮といった〝かくし味〟を提案。好評の地域逸品コーナーでは、小ロットでしか生産できない食材、商品や新規参入のメーカーの魅力も伝わるよう知恵を絞った。大手と一線を画すオリジナリティを追求しました」卸ならではのアンテナを開発に生かしたオリジナル商品は、パッケージにカープ坊やをあしらい大ヒットした「ぶちうまい焼きそば」に続き、オタフクソースや川中醤油、三島食品、出野水産など地元メーカーや得意先産地とタッグを組んで十数種を商品化。出展メーカーは創業から扱う水産加工品をはじめ日配・チルド、常温、業務用の計211社が自慢の商材をアピールした。中村一朗社長は、「人手不足対応をはじめ流通小売りや飲食店など取引先の課題解決に役立つ卸機能も充実させていきたい。販促だけでなくスマホを使った発注業務などDX化も推進していく」進取の気性は父親の成朗会長譲りか。
体幹を鍛える
桑原組などを擁する持ち株会社テラスホールディングス(西区己斐本町)は、広島JPビルディング2階で運営するフードホール「グランゲート広島」で地域連携した各種イベントを展開し、交流の輪を広げている。1月11日〜2月16日に北広島町特産品を販売。18日は神楽・八岐大蛇を上演。26日は社会実験として、広島駅前の水辺広場ゾーンと南口地下広場を会場にフィンランド発祥スポーツのモルックの選手権大会を主催した。桑原明夫社長は、「昨秋から市や中国地域創造研究センターから受託して広島駅前猿猴橋付近の水辺空間のにぎわいづくりに参画している。ビルオーナーから誘いを受け広島駅周辺地区まちづくり協議会に加盟。イベントの企画、運営を通じて地域に役立つことが主目的だが、社員のモチベーションも格段に高くなった。小さな体験や達成感も積み重ねていくと確かな自信になる。自分で考え、行動した結果、失敗しようとも貴重な体験。さらに前へ進めていく原動力になる。さまざまなイベント事業を重ねて社員の体幹を鍛えていきたい」18日の神楽上演では箕野博司町長も盛んにエールを送った。地域連携を切り口に人がつながり、思いがけない発想をもたらしているようだ。
特許庁広報誌に登場
昨年12月に発行された特許庁の広報誌に、第三の和酒「浄酎(じょうちゅう)」を製造販売するナオライ(神石高原町)が取り上げられた。特許技術の低温浄溜で浄酎を生み出したビジネスモデルや知財戦略などが漫画で紹介されている。2015年に広島県の離島・三角島(呉市豊町)で、酒造関連の親族を多く持つ三宅紘一郎社長が創業。19年に神石高原町にあった酒蔵をリノベーションして浄酎の製造拠点を開設した。浄酎は、日本酒を40度以下の低温で浄溜することで日本酒の香りを保ち長期保存でも劣化しない特徴がある。広報誌は特許事務所や共同創業者、デザイナーと相談し特許やボトルの意匠権を取得した経緯などをイラストで描く。同社は早ければ2月にも石川県・中能登町で地元の日本酒メーカーと連携した新たな生産拠点開設を計画している。三宅社長は、「山口、新潟、佐賀などでも計画がある。知財を活用して築いた酒蔵とのネットワークを全国展開したい」
木と土の建築
家を建てようとする人のヒントになりそう。2月15日午後2時から中区の広島YMCA 国際文化センターで、広島県建築士会の住宅講演会「木と土の建築」がある。県木造住宅生産体制強化推進協議会と共催。講師は、2024年日本建築学会賞(作品)受賞作「岩国のアトリエ」(建築作品)を設計した向山徹建築設計事務所代表で岡山県立大の向山徹教授。建築士会住宅委員会の佐々岡由訓委員長(佐々岡建設社長)は、「受賞作は、木組みといった木工技術や熟練の左官職人の土壁など伝統的な手業を今の時代に再解釈し、見事に生かされている。伝統と現代の融合が新しい魅力を生み出した。地域の設計や施工業界のスキルアップも願いながら、昔ながらの日本家屋の良さ、伝統技術の素晴らしさを再認識していただきたい」会員や学生無料、一般1000円。
地元就職促す
4年連続ワーストとなった広島県の転出超過。広島都心会議は中高校生に地元で働く魅力を伝えるキャリア教育マガジン「さくらノート広島県版」を1月末に創刊した。PDF含め103校に順次、無料配布。マガジン企画会社さくらノート北陸と協力し12社の仕事内容や働く先輩の姿を取り上げた。学生が地元の魅力をディスカッションした企画や学校紹介などの記事もある。フルカラーB5判48㌻。ひろしまブランド部会長の大森富士子さんは、「大学進学などで大都市へ出た若者は地元に働く場がないと思っている。これは大きな誤解。やりがいある仕事と新卒採用に積極的な企業は多い。いったん県外へ出るとそれを伝える手段が限られてくる。県外へ出る前にマガジンで知ってもらいたい」