コロナ禍で店を一時閉めたのを機に畑仕事を楽しむようになりました。湯来にある100坪(330平方㍍)ほどで野菜を作るお客さまと女房に仲間入り。仕事の手が空く頃合いを見計らった土いじりだけに、水やりが少なくても差し支えのない根野菜を中心に栽培しています。1月末に自然薯30本ほどを初収穫、仲間内の会で堪能しました。18歳で茶道具を中心に美術品を扱う世界に飛び込み、父から経営を継いで25年目を迎え、定休日はあっても年中休みなしも同然。近年は茶道人口の減少に連れて茶道具を手放される方が増え、床のない住まいも一般的になって寂しさが増します。一時、経済成長に沸く中国から、日本に眠る骨とう品を買い漁る動きが高まり繁忙時期があったものの今は一段落。最近は相続関係の相談も増えてきた。物事の表裏に触れる機会も多々あり、神経を使います。畑仕事は自然と向き合って無になれる貴重なひととき。携帯電話や情報の海から離れ、ゆっくりと過ごせる。湯来の畑仕事は月1回がやっとですが、今年はできれば3、4回は通いたいと思っています。仕事柄、時代の様変わりを肌で感じており、伝統文化が失われはしないか危惧しています。良い道具、美術品を手にするには、良いものを自分の目で見て触って、購入することが一番の勉強かと思います。畑仕事は、肥料代など考えると相当高くつきますが、みずみずしい格別なおいしさと、無になれる時間には代えられません。
担当記者:藤井