2024年の広島県経済は緩やかな回復基調になったが、物価高や原材料高が続き、企業業績や家計への影響が懸念される。広島では新サッカースタジアムが開業。今春にはJR広島駅ビルが開業するなど都市開発が進む。地元金融機関トップに25年の県経済の見通しや注力分野などを聞いた。
―県経済の現状と25年の見通しは。製造業はマツダの国内生産が前年を下回る中、工場で製造ラインの変更などの動きが出ています。一般機械や鉄鋼も弱含むなど足踏みが続き、業績回復と価格転嫁が進まない2極化の傾向が出ています。非製造業は物価上昇による消費マインド低迷、人手不足の影響が出ています。25年は緩やかな回復が続く見通しですが、海外経済の動向や構造的な人手不足など下振れリスクもあります。―新年の注力分野は。24年度から第16次経営3カ年計画「共創」を開始。25年5月1日に設立80周年を迎え、母店を中心にオリジナル企画「地域感謝プロジェクト」を策定中で、実施後に表彰も行う予定です。販路拡大支援は、24年度は商品ブラッシュアップ「ぶち塾」(全14回)に4社、サポーター17人が参加。広島駅北口で開催の県内4信金合同「ひろしまスイーツマルシェ」は計16社が出展。12月にミナモアに出店するAKOMEYA TOKYOとの商談会は食品製造11社が参加しました。人材紹介支援は本部にキャリアコンサルタント資格を持つ専担者を配置し、24年度上半期の求人受付数73 先、成約29先(23年度は受付141先、成約29先)と成果が出ています。事業承継支援は、廃業する取引先従業員の人材紹介でも実績が出ており、本部専担者と営業店担当者がペアになり実務を行うインターバル研修も実施。SDGsは30年度までに温室効果ガス排出量を13年度比50%以上削減を目標に、23年度末時点で削減率は38・7%と順調です。今後本店の空調やエレベーターの更新・改修、LED化を計画。26年1月完成予定の己斐支店も太陽光発電パネルやLED化などで初のZEB取得を見込んでいます。SDGs・カーボンニュートラルサポートは22年4月〜24年9月末の累計が1000社を超えました。発行手数料の一部を寄付するSDGs私募債も累計34社に。個人向けではNISA口座が9月末で1万8350口座に増加。取引先従業員を対象にした「職域資産運用セミナー」を出張開催しています。―信金業界の動向、チャネル政策は。24年は合併はなく現在全国で254金庫です。ウェブを活用した非対面型金融サービスのニーズが増し、業界共同で取り組む「預かり資産ナビ」などを活用。スマホで口座の入出金明細確認などができる「ひろしんアプリ」の利用者数が増え、メイン口座登録数は6万件超と当初目標を上回り、昨年11月からは「インターネットバンキング自動ログインサービス」の提供を開始。「ウェブ完結型ローン」は、個人向けローン実行額の75%(住宅ローン除く)を超えており、今後も機能拡充を図りたい。24年4月から生命保険契約のペーパーレス化(タブレット画面への電子サイン)を全店で導入し、7月には渉外担当者の営業支援システムを更改。渉外係は顧客情報の照会や交渉履歴の蓄積・共有化機能を備えたタブレットと電話用のスマホを携え営業しています。―ゼロゼロ融資の返済状況は。ゼロゼロ融資は20年5月〜21年5月まで累計9899件、総額1433億4200万円でした。元金返済が本格化する中、県制度融資「伴走支援型特別資金」(23年1月〜24年3月、累計2971件・総額829億8000万円)も活用し、資金繰りの円滑化に取り組んできました。24年9月末現在のゼロゼロ融資残高は5230件・481億1600万円(前年同月7433件・842億5000万円)と減っており、24年9月末の伴走支援残高は2797件・707億7億800万円になっています。足元の取引先の資金繰りはおおむね安定していますが、引き続き対話を通じて、取引先の実情に応じた支援を行う予定です。
担当記者:大谷