IT×ものづくりで存在感放つ独立系
人の困り事を放っておけない。創業者の性分が今に根付く。信用をモットーに技術力と人間力を大切にする企業理念を根幹に据える。
戦後の復興期を経て製造業向けシステムの受託開発を中心に地場トップクラスへ成長を遂げた。工場の現場で顧客の声に耳を傾け、何が求められているのか全神経を研ぎ澄ます。取引先は鉄鋼のJFE、通信のNTTのグループ会社など大手が名を連ね、売上高は60億円規模。大手の子会社などを除く独立系で地歩を築く。上野弘幸社長(71)は「70年を超える業歴の中で築いてきた信用こそ、わが社の源泉」と胸を張る。半世紀以上続く取引先も多い。
製造業向けほか、病院向け画像診断やコミュニティーFMの放送管理、人工衛星関連など多方面にわたる。AI技術の発展などで業界環境が激しく変動する中、新たな収益事業に自社ブランドのシステムやウェブサービスなどを視野に入れる。
困り事に応える
小学校教員だった創業者の三浦博明氏が1953年に市内で設立した「デルタ青写真社」に始まる。日本鋼管(現JFE)福山製鉄所内に支店を設け、製鉄設備機械の図面複製をなりわいとした。顧客の悩みや相談に応える中でデータ入力、システム開発、文書の電子化、機械設計へと事業領域を拡大。「創業者は困っている人を放っておけない性分で、赤字覚悟で引き受けた仕事も多かったと聞く。しかし親身な対応が評判になり口コミで取引先が広がった。長続きしなかったものもあるが、事業分野が多岐に及び、結果的に経営の安定化につながった」と語る。

製造現場に寄り添う
実際に体を動かして「ものづくり」の現場に携わる。福山市と熊野町の工場を拠点に、産業分野の幅広い案件を手掛ける。製鉄所内の機械や原料搬送用配管の設計は現地調査に始まり、製作、組み立て、据え付けの各事業者、客先の保全部門まで関係者と顔を合わせて作り上げる。医療検査キットの自動組み立て装置は自社で開発・設計し、製造から立ち上げまで一貫。半導体工場向けにチラー(冷却水循環装置)を設計・製造するほか、メーカーを問わない修理にも対応する。設備投資が拡大する半導体分野を中心に、今後も安定した需要を見込む。顧客に密着して積み重ねた開発経験と現場理解は、システム分野にも生きている。
人への投資で成長加速
創業80周年の2033年に売上高70億円、経常利益3億5000万円を目標に掲げる。柔軟な発想を育む企業風土づくりに力を入れる。若手中心の意見交換会のほか、部門横断の階層別研修、管理職向けマネジメント研修などを相次ぎ導入。昨年10月に本社移転し、区切りのない執務室などで意思疎通を図りやすくした。従業員エンゲージメントも高まりつつあり、部門の垣根を超えた営業活動などに新たな兆しが見え始めた。

〝信用〟を貫く
「嘘をつかない」「約束を守る」といった凡事を徹底。上野社長が管理職に就いた20数年前、今も胸に刻む出来事があった。「納入システムに不具合が生じ、急きょ全国から技術者を集めた。私は技術的な業務に入れなかったが、技術者が不眠不休で復旧作業を続ける姿を目の当たりにした。必ず取引先の期待に応えるという執念に圧倒された」という。
「経営の可視化」も進める。賃金テーブルや賞与の算定方法を公開。毎月のチームごとの損益も各リーダーに開示する。経営の実態を包み隠さず伝え、社員との信頼関係を築く。一人一人が経営を自分事として捉え、考える習慣につなげていく。こうした人間集団を育てる愚直な取り組みが信頼を積み上げ、将来へ踏み出す力になる。
会社概要
本社:広島市中区舟入本町15―2
代表:上野 弘幸 社長
創業:1953年11月
売上高:60億3062万円(2025年10月期)
従業員数:310人(25年10月末)