2024年シーズンのプロ野球ゴールデン・グラブ賞にカープから矢野雅哉(遊撃手)と秋山翔吾(外野手)が選ばれた。矢野は得票率73%で2位の長岡秀樹(ヤクルト)を圧倒。秋山は外野手でリーグ最多得票を獲得した。これに22年まで10年連続で同賞を獲得していた菊池涼介(二塁手)を加えると、カープは〝鉄のセンターライン〟を持っていることになる。NHK(BS)番組の「球辞苑」によると、24年にプロ野球12球団の中でスライディングキャッチによって打者をアウトにした回数は、矢野が1位、菊池が3位だった。つまり2人は、見た目でもファインプレーによって多くのアウトを奪ったのだ。これはチームの士気を盛り上げることにも役立っている。その球辞苑でインタビューを受けた矢野が、実際にグラブを持って解説してくれた。彼のスライディングキャッチの極意を紹介しておこう。それは私たちが子どもの頃に習った正しい捕球方法とは真逆だった。特にアウトかセーフか際どいタイミングの時には、打球に対して正面から入らないことだという。これをさらに解説すると、教科書通りに正面で捕球すると、送球のために余分なステップが必要になるからである。矢野の場合はスライディングで捕球し、立ち上がって踏ん張る足をそのまま送球の軸に使っているのだ。その間、余分なステップが一切ないので、他の選手よりも1、2歩早く送球できる。この守り方は、菊池も全く同じ。これぞプロである。〝鉄のセンターライン〟は25年シーズンも機能し続けると思う。
プロフィル
迫 勝則(さこ かつのり) 1946年生まれ。マツダ退社後に広島国際学院大学部長などを務め、執筆・講演活動を続ける。近著は「森下に惚れる」「逆境の美学」