万博が好機
今春は広島駅の新ビルをはじめ広島城三の丸、県庁前の商業施設も開業する。4月開幕の大阪・関西万博は外国人来場者350万人を予測。広島へ旅行者を呼び込む格好のタイミングになり、日本企業にとっては技術を売り込むチャンス到来。マツダは万博の会場運営に協賛し「MX―30」を提供する。完全子会社の関西マツダも、交通事故のない未来社会やEVによる温暖化防止などのテーマで共創プログラムに加わる。マツダの毛籠勝弘社長は、「これまで万博に足を運んだ際、とても心が躍った。当社はブランド体験の発信を重視しており、大阪の発信拠点に続き、東京にも近く開設予定。広島にはマツダミュージアムもある。やはりリアルの接点が大切。多くの外国人が当社マザー工場のある日本を訪れ、マツダ車の魅力を強く感じてもらえるのではないかと期待している」旧市民球場跡地のひろしまゲートパークでは、原爆投下後の復興を支えた企業を紹介する「プライドオブヒロシマ」常設展に協力している。「G7広島サミットと日本被団協のノーベル平和賞受賞によって、核なき世界への願いと広島の名が改めて世界に発信された。被爆80年という節目の一年。持続可能で平和な社会の実現に向けた企業活動を進めたい」
弾みがつく
廿日市市が元気だ。宮島は国内外の観光客で大いににぎわう。2023年10月に導入された1人当たり100円の訪問税もなんのその、年間来島者数は昨年12月15日で過去最多の465万7343人を突破。弾みがついたのか、市内各地で再開発が進む。米ホテル大手のヒルトンが宮島口に高級ホテルを計画。吉和ではサクラオブルワリーアンドディスティラリーがウイスキー蒸留所併設型テーマパークを予定する。カープ2軍の練習場や寮も新築移転。廿日市商工会議所の渋谷憲和会頭(シブヤ会長)は、「平良地区丘陵開発が日に日に姿を現し、観光・商業・ホテル、産業の各エリアに大きな期待感と現実味を感じられるようになってきた。オーバーツーリズム対策としても周遊促進が不可欠。宮島を核に各施設を線で結ぶ道路整備を働き掛けるなど、市域全体の観光消費額向上につなげていく新年にしたい」観光業界に限らず、人手不足、価格高騰といった諸課題が事業者にのしかかる。昨年発足した官民組織「市産業まちづくり委員会」を通して有効な対策を打ち、みんなが元気になる仕組みをつくりたいと意気込む。
賃上げが焦点
中国経済産業局の実国慎一局長は、昨年12月のプレス懇談会で中国5県の個人消費と展望を話した。「スーパー、百貨店などの商業6業態の販売額は10月時点で前年同月比1・9%マイナスとなった。気温高や休日数の影響があったとはいえ、ここまで下がるものかという印象だ。中でもスーパーは28カ月ぶりにマイナス値を記録。秋口の米不足に続く価格高騰もあり、日常の買い物に節約志向が働いていると見られる」企業が支給した昨年暮れのボーナス額は一昨年よりも名目、実質ともに高くなった。「ボーナス額の上昇が消費活動へ向かうことを期待したい」賃上げに取り組む企業の動きがどう広がるのかが大きなポイント。鉱工業生産が6カ月連続して「緩やかな持ち直しの動き」と安定。トランプ政権の政策に関心が集まり、関税引き上げや為替の動向も注視が必要だが企業は雇用を守り、消費を支える賃上げができるだけの体力とマインドを持ち続けることが鍵になりそうだ。
成功するまでやる
データホライゾン(西区)の創業者で上場を果たした内海良夫会長(77)から昨年7月に社長を継いだ瀬川翔社長(40)は、IT大手DeNA(東京)のヘルスケア事業をけん引してきた経験を生かし、成長カーブに乗せていく構えだ。新年を迎え、みんなが目標に向かって挑戦し続ける環境づくりなどを語った。「私自身もそうですが〝仕事で育つ〟という考え方を大事にしている。社員一人一人がチャレンジな目標を乗り越え、会社と共に成長していく。人事制度の整備も進め、多様な目標・評価制度の設計やライフステージに合わせてパフォーマンスを最大化してもらう柔軟な働き方をどんどん導入する計画だ。内海会長の考えには創業者ならではの深みがあり、教わることが多い。成功するまでやり続けるという信念と超プラス思考に驚かされた。健康・医療分野の課題はあまりにも大きく、短期で成果が出せないことも多々あるが、決して諦めず、主要な取引先である保険者の反応を吸収しながら改善を重ね、長期的な視点で成果を出す。時間がかかろうとぶれることなく志を貫く。こうした経営姿勢を糧とし、引き継いでいきたい」親子ほどの年齢差。創業者の魂に触れて次代を担う発想と化学反応し、どんな歴史を刻むだろうか。
万博に出る
創業126年の仿古堂(熊野町)4代目、井原倫子社長は家業の熊野筆の伝統とその魅力を多くの人に伝えようと、今年もさまざまなイベントを通じて発信していく。売り上げの8割を占める書筆は著名な書家からも定評がある。昨年11月、会員約9千人を擁し書道界発展に重責を担う日本屈指の書道団体(公社)日本書芸院から大阪・関西万博に出ないかと声が掛かった。「直接、指名を頂き、産地として筆文化を発信したいと決断。今、熊野筆だけでなく伝統工芸の産地は職人の高齢化が進み、未来を危惧している。全国各地の産地の職人が連携する時だと思う。当社は筆作りに対し情熱と誠実な姿勢があれば、年齢を問わず採用。2022年に50代男性、今年は40代女性が筆作りに従事したいと門戸を叩いてくれた。二人ともまったくの未経験者だが手仕事に魅力を感じてくれている」仿古堂ののれんを守るとともに、日本の伝統工芸にも思いを寄せる。ユネスコ無形文化遺産の候補に選定された「書道」は、来年11月ごろにあるユネスコ政府間委員会で登録が決まる見通しに。万博へは伝統工芸士の実演をはじめ、福利厚生の一環として従業員一同も日帰りツアーも計画しているという。
広島から全国展開
広島の広告業界をリードする若手写真家が歴史ある写真公募展で見事、優秀賞を受け、広島から全国展開できることを示した。写真、動画撮影などのライフマーケット(南区皆実町)は昨年12月13日、(公社)日本広告写真家協会(東京)主催の「APAアワード2025」広告作品部門で3位に相当する優秀賞に輝いた。応募総数203作品611枚から選ばれた受賞作は、新日本造機(東京)の50周年記念誌に向けた写真「SNM50―YEARS」。同社専務で広告写真家の藤本遥己さん(29)が撮影し、ペンギングラフィックス(安佐南区)がアートディレクションとデザインを担当した。藤本さんは3年連続で入賞を果たし、同社社長の元圭一(もと・けいいち)さんも審査員長賞などを受けた。入賞者8人のうち5人は東京で活動する中、近畿、中四国エリアからは2人だけ。藤本さんは、「ひと目で全貌を見渡すことができない全長25㍍近い大型製品の物撮りに挑んだ。工場内に高所作業車を搬入し、そこから見下ろすように撮影。多くの人の助けを借りた。APAアワードは広告写真家にとって最高峰の舞台だが、やはり地方からの選出は少ないという。今回の受賞で改めて広島から全国にアプローチできることを証明できたと思う。今後も応募し続けながら、より多くの優秀な作品が作れるようクリエイターの育成にも力を尽くしたい」