修道学園300周年
政財界をはじめ各界に多くの人材を輩出してきた修道学園(安佐南区)が、2025年で創始300周年を迎える。江戸中期、1725年11月に広島藩5代目藩主の浅野吉長が藩校「講学所」を開き、歴史を刻んできた。廃藩置県で藩校は廃止されたものの、12代の長勲が私財を投じ、1878年に私学を興した。87年に山田十竹校長が浅野家から経営を引き継いだ後、1905年には(財)私立修道中学校が発足。48年に修道高を立ち上げる。52年に地元財界の要請に応えて「修道短期大学商科」を設立。現在は修道中高、広島修道大学、男女共学の広島修道大学ひろしま協創中高(2015年に統合した旧修大鈴峯女子中高)を合わせて8900人の生徒・学生を擁する西日本有数の学園へ発展。修道中高出身で県議会議長などを務めた修道学園の林正夫理事長(83)は、「これまでに14万3000人の卒業生がつないできた修道ブランドの歴史と絆を重ね、われわれの誇りとしている。修道学園各校の強みや特色を伸ばし、社会に求められる人材を送り出す学園使命を守り続けていきたい」周年事業として修道中高の本館建て替えと修大の新体育館建設工事を進め、27年4月には修大に県内私学初の農学部(仮称)を設置予定。
創業350周年の夢
日本三大銘醸地の一つといわれる東広島市西条で最古の白牡丹酒造(西条本町)が2025年で創業350周年を迎える。創業家15代目の島治正社長は、「おかげさまで大きな節目を迎えられた。アルコール消費量が減少しているが、400周年を見据えて、これまでの枠にとらわれない経営に挑戦します」伝統技法を生かしながら付加価値の創造を図り、新たな領域へ踏み込みたいと意欲をにじます。同社は23年に西条出身で日本酒杜氏(とうじ)組合連合会の石川達也会長の協力を得て、酒母造りに蔵内の自然な乳酸菌を使う伝統的手法「生酛(きもと)」で酒を造った。今の酒母造りは速醸酛(そくじょうもと)が主流で、生酛はその倍近い約1か月がかかる。だが、複雑で力強い味わいになるという。近年、日本酒は国際的に高い評価を受けて海外輸出が増え始めており、高級ワインのようなビンテージ化の動きもある。白牡丹酒造はこの流れに乗り、生命力の強い菌による生酛の魅力を引き出す方法を探っている。「広大工学部で発酵工学を学んだ後、酒類総合研究所(同市)の前身である旧醸造試験場(東京)で酒造りを研究。当時、生酛の金賞酒と速醸酛の銀賞酒を長期間放置して比べたところ、金賞酒が一段とうまい酒になっていて驚いた。古来の製法によって今の酒の価値を向上させたことが何より感慨深い。わが蔵でも長期熟成酒を造ってみたい」
古と今をつなぐ
広島城三の丸整備事業の第一期エリアとして、3月開業を待つ商業施設内に、今に武家茶道を伝える上田宗箇流が初めて監修するカフェ「SOKOCAFÉ(そうこ カフェ)」が登場する。カジュアルだが、武家文化や茶道の魅力に触れることができる温故知新を具現化したカフェ構想を描く。上田宗篁若宗匠は、「400年にわたり広島の地で受け継がれてきた上田宗箇流にとって初の挑戦です。親しみやすさがあり、だが決して崩してはならない伝統文化とのバランスが非常に難しく、悪戦苦闘中。国内外の多くの方に気軽に楽しんでいただければと日夜奮闘しています。幕末や被爆の混乱など苦難を乗り越えてきた武家茶道に新たなアプローチを加えた伝統文化のアップデートに触れていただく機会になればと願っています。そうして未来へ向けた武家文化・茶道文化の継承につなげたいと考えています」再開発が進む広島市街地で「80数年ぶりに広島城内に戻る」原点回帰に逆に新鮮さを感じているという。「伝統文化の在り方は時代により変わっていくが、その時々の担い手が悩み、組み立て、実行、検証しながら今を生きる方々にとって意味や価値のあるものにし続けなければならないと思う。広島のまちの発展やにぎわいの一翼を担い、市民の誇りとなれるよう貢献し続けていきたい」
誠実な商い貫く
県内最古参の尾道造酢(創業から443年)、山科(西区、同434年)に次ぐ長寿企業の赤松製薬(中区本通)は2025年で410周年を迎える。広島城の築城に商機を見た創業者が岡山の金川村から来広。漢方を調合し、1918年ごろのスペインかぜ流行時は飛ぶように売れ、海外にも卸す。しかし三種の神器を掲げた女神の商標は外国から軍国主義だと非難され、急きょ剣の絵柄を無くすなど対策を講じて事なきを得た。その後、原料が手に入りづらくなり、小売りに専念。17代当主の赤松正康さん(65)は、「4年前に亡くなった父から、原爆投下後に店を再興した話をよく聞いた。終戦後、他県の薬学学校からやっとの思いで帰るとガレキの山となった店舗跡地に両親の亡きがらが埋もれており、悲しみのどん底に。何かあればここを掘れという言葉を思い出し、薬の在りかを記す紙や金品の入ったツボを発掘。初めて親父のありがたみを感じたと、しみじみと話してくれたのが思い出に残る」バラックで営業再開。薬は人の命に関わるからと、物資不足の中でも値段をふっかけることは一切しない。誠実な商売を貫いた。「当社は毎日、医薬学や健康の最新情報を社員に共有。患者の病状を丁寧に聞き、一人一人に合った処方を心掛けている。地域の薬局に求められ、生き残る道だと確信している」娘2人が薬学部に通う。同じ道を志したのが余程うれしいのだろう。顔がほころんだ。
グッドカンパニー賞
食を通じて、いかに喜んでもらい、満足してもらえるか。2025年も〝お腹の調子を整える〟飲料事業にまい進する野村乳業(安芸郡府中町)は、昨年末に(公社)中小企業研究センター(東京)の第58回グッドカンパニー大賞イノベーション事業化推進賞(全国で2社)を受けた。野村和弘社長は、「非常にうれしく、大きな励みになった。生きて腸に届く植物乳酸菌の量が世界最高水準に達し、独自の市場ポジションを築いていると検証された。世界的に発酵食品市場が拡大する中、QOL(生活の質)向上に役立つイノベーションと高い評価を頂いた。大手と同じ土俵で価格競争に苦しんだヨーグルト市場から、植物乳酸菌飲料の分野に軸足を据え、海外市場も視野に果敢にチャレンジしたい」一方で今夏を目途に、国内自給率の高い米を原料にした過敏性腸症候群を改善する飲料を市場投入する。「CO2削減や米の問題、体調不良改善など日本の抱える課題に少しでも役立つことができるよう、米農家、消費者共に三方よしの好循環が生まれる事業化を軌道に乗せる年にしていく」