工作機械、自動車部品、表面処理のトーヨーエイテック(南区)は、2030年に向けた成長戦略を策定している。工作機械は30年度に部門売上高300〜350億円を目標にし、国内大手メーカーの仲間入りに向けた地固めを図る。

―中期計画の進捗と今後の計画は。新型コロナの影響を踏まえ、現中期計画は25年まで2年延長。工作機械部門の売上高目標200億円を23年度に達成し、現在策定中の成長戦略では30年度に300〜350億円を目指し、大手メーカーに追いつく基盤づくりをしたい。工作機械の中で、内面研削盤、シリコンインゴット切断用のワイヤーソーに続く3本目の柱として歯車研削盤を位置付け、24年2月に製品を自動車関連2社に納入しましたが、まだ量産には至っていません。引き合いは中米やインドからも来ていますが、まず国内で実績を上げたいですね。23年に設立した中国上海の現地法人は所長含め駐在員3人、総勢7人体制で、工作機械のアフターサービス、部品交換、歯車研削盤の市場調査・顧客訪問を実施。歯車研削盤量産へ向け、本社の自動車部品製造ラインの一部を工作機製造スペースとし、現在の1・5倍に拡張する予定です。歯車研削盤販売が軌道に乗り年産100台規模になると、中国など新たな製造拠点を考える必要があります。―日本国際工作機械見本市出展の手応えは。横形内面研削盤と歯車研削盤の新モデルを展示実演しました。横形内面研削盤「THG―35C」は熟練工が15〜20分かけ測定しながら行う芯出し作業を自動化。歯車研削盤「TGG26―2W―HS」は高速小型砥石軸を採用し、難易度の高い減速機などの小径歯車や軸付き歯車を加工でき、自社調べでは砥石の自動交換は世界初です。自動化・省人化ニーズは高く、立形研削盤への応用も考えています。―工作機械の研究開発テーマは。製造工程を集約し電気代を抑え、安く早く加工・製造できる製品を目指しています。内面研削盤の1機種で工程20%削減の目標を達成しつつあり、内面研削盤全機種に展開し、台湾、中国、韓国など海外製品に価格面でも対抗したい。THG―35Cはベッド(台)にミネラルキャスト(粉砕鉱石とエポキシ樹脂の複合材)を初採用。従来鋳物でしたが、熱安定性・高減衰性に加え、製造時のCO2排出量や電気コスト削減に役立っています。―工作機械業界の動向はどうですか。日工会が発表した23年度の総受注額は1兆4500億円と前年比14・8%減でした。マイナスは20年度以来3年ぶりで、国内の半導体市況の悪化や中国の景気減速が影響しました。自社の23年度業績は好調でしたが、今期初時点で国内外の半導体装置、ベアリング向けなどで受注残が積み上がっておらず、期中での受注も未だ十分に伸びていない状況です。―自動車部品の製造販売の状況は。東広島工場のマツダのラージ群向けフューエルレール(燃料供給管)ラインを増設。自動車部品はエンジン車向けオイルポンプとフューエルレールが主力で、EV、電動化に向けた部品開発、販売先開拓に取り組み、この度電動式オイルポンプ(EOP)を開発しました。今後、マツダの次期車種での採用のほか、マツダ以外にも販売したい。EOPは独自にモーターを備え電子制御で効率的に油圧の発生や循環をさせる仕組みです。フューエルレールはガソリンエンジン向けで、日本市場は既に固まっており、中国で販路開拓したい。欧米などでEV移行先送りの動きがあり、中国も国土が広くあと10年程度はHV含めガソリン車部品需要はあると見込まれ、残る需要を取り込みたい。―表面処理部門はどうですか。型式認証問題による生産停止や、日本メーカーのEV先送りの動きで、メインの金型コーティング需要が昨年から今年にかけ厳しい状況です。EV化で自動車部品点数が減り金型の減少が予想され、金型以外の新ビジネス確立が課題です。11月から表面処理の営業部内に「市場開拓課」を新設。6人体制で安定的に注文がある消費財のコーティング受注開拓を目指しています。営業部は本社、埼玉、愛知に課長を配置していましたが、本社が統括。また、東日本工場(埼玉)はPVD(物理的蒸着法)を、本社工場はCVD(化学的蒸着法)とPVDを、中部日本工場(愛知)はこの両方に加え、自動車メーカーを多く抱え大型金型向けPPD設備も保有するなど工場のすみ分けも行いました。表面処理のトップ企業群は金型に加え機械刃物やボルト類のコーティングを行っています。当社はテフロン加工規制がある国もあることから、フライパンの表面処理もテストしています。新規事業として取り組んできた医療分野の冠動脈ステントの表面処理は、実用化に時間がかかることから撤退する方針です。

担当記者:大谷

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